英検1級を目指していると、「1級を取れば年収1,000万円いける」「50代男性の平均年収は1,114万円」という話を必ずと言っていいほど耳にします。
しかし、その数字だけを信じてしまうと、現実とのギャップにがっかりすることにもなりかねません。
この記事では、英検協会の公表データや、実際の求人情報をもとに、「英検1級と年収」の関係をできるだけ冷静に整理します。
どこまでが事実で、どこからが誇張なのか。
どんな仕事なら年収アップにつながりやすいのか。
そして、英検1級を武器にするために、今日から何をすればいいのかまで具体的にお伝えします。
- 「50代男性1114万円」データの本当の意味と限界が分かる
- 英検1級で現実的に狙える年収帯と職種イメージがつかめる
- 英検1級とTOEIC、どちらを優先すべきか判断できる
- 英検1級を年収アップにつなげる具体的な行動プランが分かる
英検1級と年収の結論
まずは、「英検1級を取れば年収はいくらになるのか」という一番気になるポイントから整理します。
ここでは、英検協会のデータをそのまま鵜呑みにせず、前提条件と「相関」と「因果」の違いを踏まえて解説します。
50代男性1114万円の前提
英検協会が発表した調査では、「50代男性の英検1級取得者の平均年収は1114万円」と報告されています。
この数字だけを見ると、「1級を取れば誰でも年収1,000万円」と感じてしまうかもしれません。
しかし、このデータにはいくつかの前提があります。
まず、調査対象は「英ナビ!の社会人会員」です。
つまり、日本の社会人全体から無作為に集めたデータではありません。
英語学習に積極的で、インターネットサービスに登録するタイプの人が多いと考えられます。
さらに、年収を詳しく分析しているのは「40代・50代男性」に限られています。
20代・30代や女性のデータはほとんど出ていません。
また、この1114万円という数字は「英検1級を持つ50代男性の平均年収」であって、「50代男性全体の平均」ではありません。
もともと高学歴で、大企業や専門職に就きやすい層が多く含まれていると考えるのが自然です。
つまり、このデータが示しているのは、「この調査に答えた50代男性で、1級まで到達している人は高収入の人が多かった」という事実だけです。
「1級を取れば必ず1,000万円」とは読めない点に注意が必要です。
英検協会の元データは、日本英語検定協会の公式ページで確認できます。
相関と因果の違い
英検1級と年収の話で一番大事なのが、「相関」と「因果」を分けて考えることです。
「相関」とは、「一緒に高くなったり低くなったりしている関係」です。
英検の級が上がるほど年収も高くなる、というのはたしかに相関です。
実際、英検協会の調査でも、40代・50代男性では上位級ほど平均年収が高い傾向が出ています。
一方、「因果」は「AだからBになる」という関係です。
ここで注意したいのは、「英検1級と年収に相関がある=英検1級が年収を上げている」とは限らないということです。
たとえば、次のような「第三の要因」が入り込んでいる可能性があります。
この場合、「学歴」や「家庭の経済力」が、本当の意味で年収を押し上げています。
英検1級は、その結果として「高学歴で恵まれた環境の人が取りやすい資格」になっている面もある、という見方です。
つまり、「英検1級を取ったから年収が上がる」というより、「年収が高くなりやすい人が1級まで到達しやすい」と考える方が現実に近いです。
ここを理解しておくと、「1級さえ取れば人生逆転」という過度な期待をせず、冷静にキャリア戦略を立てられます。
英検1級で期待できる収入帯
では、英検1級を持っていると、現実にはどのくらいの年収帯を狙いやすくなるのでしょうか。
ここでは、「英検1級レベルが条件・歓迎とされる求人情報」から逆算してイメージをつかみます。
東京都内の求人を中心に見ると、英検1級・準1級レベルを求めるポジションの多くは、年収500〜800万円帯が1つのボリュームゾーンになっています。
たとえば次のような仕事です。
専門職やマネージャー職と組み合わさると、800〜1,200万円レンジの求人も見えてきます。
ただし、その場合は「英検1級+専門スキル+マネジメント経験」など、英語以外の条件もかなり重くなります。
一方、アルバイトや業務委託では、英検1級レベルなら時給3,000〜4,000円クラスの英語講師・英語コーチの求人もあります。
時給は高いですが、フルタイムで安定して入れるか、社会保険などの条件をどう見るかも大切です。
まとめると、「英検1級だけで年収1,000万円」というより、「英検1級+専門性」で500〜800万円帯が現実的なターゲットと考えるのが無難です。

英検1級が評価される理由
次に、「なぜ英検1級は年収やキャリアでプラスに働きやすいのか」を整理します。
同じ英語資格でも、TOEICと比べてどう違うのか、有効期限や希少性がどう影響するのかを見ていきます。
英検協会データの読み方
英検協会は、「英語力と人生の質(QOL)の関係」をテーマにした調査を行い、その中で年収データも公表しています。
ここで重要なのは、「データが示している事実」と、「そこから読み取ってよい解釈」を分けることです。
事実として分かるのは次のような点です。
一方で、「英検1級を取ると幸せになる」「早く英語を始めると年収が上がる」といったストレートな結論までは、このデータだけでは言えません。
背景には、「家庭の裕福さ」「学歴」「職種」など、多くの要因が絡んでいるからです。
データの代表性についても注意が必要です。
英語教育の社会学者は、ヤフーニュースの解説記事で、「英ナビ!会員という限られた層のデータを日本全体に広げるのは無理がある」と指摘しています。
つまり、英検協会のデータは、「英語力が高くて年収も高い人が一定数いること」を示す材料としては参考になります。
しかし、「だから誰でも1級を取れば人生が好転する」と考える根拠にはなりません。
TOEICとの位置づけの違い
英語資格と言えば、TOEICを思い浮かべる人も多いと思います。
英検1級と比べたときの位置づけの違いを整理すると、次のような特徴があります。
まず、レベル感です。
英検公式は1級をCEFRで「C1レベル」としています。
TOEIC公式の対応表では、C1に相当するスコアは「Listening 490+Reading 455=合計945点」程度です。
つまり、英検1級はおおよそTOEIC L&R 945点前後のレベルと考えられます。
ただし、試験の性質は大きく違います。
TOEIC L&Rは「聞く・読む」の2技能のみです。
一方、英検1級は「読む・聞く・書く・話す」の4技能すべてを試します。
そのため、企業の現場では「TOEIC900点だけでは話せない人も多い」という実感があり、スピーキングの証拠がほしい場面も増えています。
英検1級は受験者も合格者も少なく、TOEIC高得点よりも「希少性」と「総合力の証明」として評価されやすい傾向があります。
実務で英語を使う部署や人事部からは、「1級を持っているなら英語は心配いらない」と見られることも多く、昇進や転職でプラスに働きやすい資格と言えます。
有効期限と希少性の影響
年収やキャリアを長い目で考えると、「有効期限」と「持っている人の数」も大事なポイントです。
TOEICには公式な有効期限はありませんが、実務では「2年以内のスコアを出してください」と求められることが多いです。
そのため、転職のたびに受験し直したり、昇進のタイミングでスコア更新を求められたりします。
これが意外と大きなストレスになります。
一方、英検1級は原則として有効期限がありません。
一度合格してしまえば、「C1レベルの英語力を持つ人」という肩書きはずっと残ります。
実際に使える英語力を維持する努力は必要ですが、資格としては半永久的にアピールできます。
さらに、受験者数の違いもあります。
TOEICは多くの企業で半ば強制的に受験させられるため、800点・900点台の人もかなりの人数がいます。
それに対して、英検1級に挑戦する社会人はごく一部です。
この「有効期限なし+希少性の高さ」は、長期的なキャリア資産として大きな強みになります。
一度しっかり取っておくと、何度も試験を受け直さなくてよい安心感があり、その分、仕事や他のスキル習得に集中できます。

英検1級を活かせる仕事と年収
ここからは、英検1級を活かしやすい具体的な職種と、その年収イメージを整理します。
教育、翻訳・通訳、専門職+英語、サービス業など、代表的なパターンごとに見ていきましょう。
教育業界と翻訳通訳の年収
英検1級は、教育業界や翻訳・通訳の世界で特に分かりやすく評価されます。
ただし、「教える仕事」「訳す仕事」は、収入の幅がとても広い分野でもあります。
東京都内の求人例から見ると、次のようなイメージになります。
教育業界の特徴は、「スキルの割に年収上限が低めになりがち」なことです。
ただし、教材開発や教室運営、マネジメントを任されるポジションに上がると、年収600〜700万円台も現実的になります。
翻訳・通訳系では、次のような求人が見られます。
ここでも、英検1級だけでなく、「実務経験」と「専門分野」が年収に強く影響します。
金融・法律・ITなど、専門知識が必要な分野に絞ると、同じ翻訳でも年収レンジが一段上がる傾向があります。
専門職プラス英語の年収帯
年収800万円以上を安定して狙いやすいのは、「専門職+英語」のパターンです。
ここでは英検1級は「武器の一つ」であり、主役はあくまで専門スキルになります。
求人例としては、次のようなものがあります。
これらの求人に共通しているのは、「英語は前提または歓迎条件だが、採用の軸は専門性と経験」という点です。
たとえば、「港湾案件の実務経験があるか」「特許・知財の経験があるか」「技術士資格を持っているか」といった要素が、年収レンジを決めます。
つまり、高年収帯では「英検1級そのもの」よりも「専門職としての実績+英語力」のセットが評価されます。
英語はあくまで「高年収ポストに応募できる条件を満たすためのパスポート」と考えるとイメージしやすいです。
求人例と資格手当の実態
英検1級は、求人票では「必須」「歓迎」「資格手当あり」など、さまざまな形で登場します。
年収アップの観点から、資格手当は見逃せないポイントです。
具体例として、商社系企業のプリセールス職では、次のような手当が設定されています。
英検1級を持っているだけで、年間24万円の年収アップに相当します。
これはベース年収とは別に、「確実に効いてくるプラス要素」です。
また、警備会社のALSOKでは、英検2級以上やTOEIC600点以上で資格手当が支給される求人もあります。
金額は非公開ですが、こうした「英語力を給料に反映する」会社は少しずつ増えています。
資格手当だけで年収を大きく伸ばすことは難しいですが、同じ仕事をするなら、英検1級を持っている方が確実にトクというケースがあるのは事実です。

年収アップ戦略と注意点
ここからは、「英検1級を年収アップにどうつなげるか」という戦略面を整理します。
同時に、よくある勘違いや、気をつけたいポイントも押さえておきましょう。
英検1級と他スキルの相乗効果
英検1級は強力な武器ですが、それ単体では年収の上限が見えやすいのも事実です。
大きく年収を伸ばしている人の多くは、英語力に「もう一つの軸」を足しています。
たとえば、次のような組み合わせが典型的です。
英語は、「世界中の情報にアクセスできる」「海外とやりとりできる」という意味で、ほぼどの専門とも相性が良いスキルです。
そのため、まずは自分が興味を持てる専門分野を1つ決め、英検1級は「専門分野を世界で使うためのツール」と位置づけると、年収の天井が上がります。
「英語一本勝負」より「英語+専門」の方が、長期的な市場価値も年収も高くなりやすいと意識しておきましょう。
TOEIC優先か英検優先か
英語資格をこれから取る人の中には、「まずTOEICなのか、最初から英検1級を目指すべきなのか」で迷う人も多いと思います。
結論から言うと、「どちらを優先すべきか」は、今の立場と目的によって変わります。
ざっくりとした判断軸は次の通りです。
| タイプ | おすすめ優先資格 | 理由 |
|---|---|---|
| 就活中の学生・第二新卒 | TOEIC(まずは700〜800) | エントリー時にスコア提出を求められることが多く、足切り回避に有効 |
| 日系企業の若手・中堅社員 | TOEIC→英検準1級→1級 | 社内評価はTOEICが分かりやすく、一定スコア取得後に4技能の英検で差別化 |
| 教育・英語コーチ・通訳翻訳志望 | 英検準1級・1級優先 | 4技能評価と資格名の分かりやすさが、そのまま仕事の信頼につながる |
| 専門職+英語(技術・会計など) | TOEICで足切りクリア→英検準1級以上 | まずTOEICで条件を満たし、その後英検で総合力と信頼感を補強 |
多くの場合、最初の一歩としては「TOEICで600〜730点程度を確保」しておくと、転職サイトや社内の条件をクリアしやすくなります。
そのうえで、長期的なキャリア資産として英検準1級〜1級を狙う、というルートが現実的です。
すでにTOEIC800〜900点を持っている人は、英検1級を目指すことで、年収アップ交渉や転職の場面で「英語は任せられる人材」としての説得力を一段と高められます。
早期英語学習と幸福度の議論
英検協会の調査では、「英語を早く学び始めた人ほど年収が高い」「英検1級・準1級取得者は幸福度も高い」という結果も出ています。
このメッセージだけを聞くと、「子どもにはとにかく早く英語を」と考えてしまいがちです。
しかし、先ほどの「相関と因果」の話と同じように、ここでも慎重な見方が必要です。
言語社会学の研究者は、「早期英語学習 → 高年収」というシンプルな因果関係には疑問を投げかけています。
代わりに、次のような構図が現実に近いとされています。
この流れの中で、「早期に英語を始めたグループ」が結果的に高年収になっているように見える、というわけです。
幸福度についても同様で、「英検1級を取ったから幸せになった」というより、「仕事で英語を使うようなやりがいのある仕事についていて、その中で1級に到達した人」が多いと考えた方が自然です。
英語や英検1級にはたしかに価値がありますが、「これさえやれば幸せと高年収が保証される魔法」と考えてしまうのは危険です。
期待はほどよく持ちつつ、「自分や家族にとって納得のいくペースと方法」で英語と付き合っていくのが大切です。

英検1級で年収を上げる行動
最後に、「英検1級を年収アップにつなげたい人」が具体的に何をすればよいのかを整理します。
職種選び、社内でのアピール方法、学習コストの回収まで、行動レベルに落とし込んでいきます。
狙うべき職種と業界選び
英検1級を最大限に活かすには、「英語が武器になる仕事」をきちんと選ぶことが重要です。
なんとなく今の仕事のままにしておくと、「英語がほとんど必要ない環境で、高レベルの英語力を持て余す」という状況にもなりかねません。
英検1級を活かしやすい業界・職種は、大きく次の4パターンに分けられます。
この中から、「自分が長く関わってもいいと思える分野」を選ぶことが大切です。
年収だけで選ぶと、途中でつらくなってしまうことが多いからです。
英語力を軸にキャリアチェンジを考える場合は、求人サイトで「英検1級」「準1級」「TOEIC900」などのキーワードを入れ、どんな職種が多いのかを定期的にウォッチしておくと、市場の感覚がつかめてきます。
社内評価と転職での伝え方
英検1級を取ったあと、「どう伝えるか」で年収への影響が変わってきます。
ただ履歴書の資格欄に書くだけでは、せっかくの努力が十分に評価されないこともあります。
社内で評価してもらうには、次のようなアピールを意識すると効果的です。
転職活動では、単に「英検1級」と書くだけでなく、次のようにストーリーとして伝えると説得力が増します。
「業務で必要な英語力を高めるために計画的に学習し、英検1級に合格しました。
現在は海外支社とのメール・会議対応や、英語資料の作成も任されています。」
このように、「資格取得の背景」「仕事でどう使っているか」をセットで伝えることで、採用側も「この人は英語を実務に生かせる」と判断しやすくなります。
投資回収を意識した学習計画
英検1級の学習には、時間もお金もかかります。
通信講座やスクールを使えば数十万円、独学でも数百〜数千時間の学習時間が必要になることが多いです。
そのため、「どのくらいの期間で、どのくらい年収アップできれば元が取れたと言えるか」をざっくり考えておくと、モチベーション維持にも役立ちます。
たとえば、次のようなイメージです。
もちろん、全員がこの通りになるわけではありません。
しかし、「資格手当+転職の可能性+副業での英語講師・翻訳」のように複数のルートを組み合わせれば、数年スパンで投資回収できるケースは少なくありません。
大切なのは、「英検1級合格」をゴールにしないことです。
合格後に、どんな仕事を狙い、どう年収アップにつなげるかまでを含めて「プロジェクト」として考えておくと、学習の意味がはっきりして継続しやすくなります。

まとめ
最後に、この記事の要点をまとめます。
英検1級と年収の関係を正しく理解し、自分のキャリアにどう生かすかのヒントとして使ってください。


