英検1級は「英検の最上級で、合格率が10%前後」と言われる難関試験です。準1級やTOEIC高得点を持っていても、1級にはなかなか届かないという声も多く聞きます。
この記事では、過去の公式データやCSEスコア、CEFRとの対応などをもとに、現在の英検1級の合格率・難易度・必要レベルをできるだけ具体的に整理します。
さらに、準1級やTOEICなど「今の自分の位置」から1級合格までの距離をイメージしやすいように、必要な語彙数・学習量・勉強法、そして合格後のメリットまでを一気に解説します。
数字だけを見ると厳しく感じますが、合格率の背景を理解し、戦略的に対策すれば「現実的に狙える目標」になります。自分に合った学習ルートをイメージしながら読んでみてください。
- 英検1級の一次・二次試験それぞれの合格率の目安と難易度
- 合格基準CSEスコアと「何割取れば合格か」の目安
- 準1級・TOEIC・TOEFL・IELTSとのレベル比較とギャップ
- 合格率を踏まえた現実的な勉強戦略と合格後のメリット
英検1級の合格率と難易度
最初に、英検1級の「合格率」と「難易度のイメージ」をはっきりさせておきます。ここがぼんやりしていると、目標設定も勉強計画も立てづらくなります。
過去の公式データや各種資料から、一次・二次それぞれの実質的な合格率と、なぜ合格率が非公開になったのか、その背景も整理していきます。
一次試験と二次試験の合格率
結論から言うと、英検1級の合格率は次のように考えるのが現実的です。
この数字には、過去の公式データが根拠としてあります。
一次試験は2010〜2015年度の公式データで、8.8〜12%の範囲に収まっています。2015年度は一次・二次あわせた合格率が約12%でした。2016年度以降は非公開になりましたが、試験内容や難易度が大きく変わっていないため、現在も「10%前後」と見るのが妥当です。
二次試験については、2007〜2011年度でだいたい56〜63%でした。現在も「6割前後が合格」という構図は大きく変わっていないと考えられます。
つまり、英検1級は「10人受けて1人が最終合格」というイメージで、その中でも最大の関門は一次試験です。一次を突破できれば、二次は周到に対策して複数回チャレンジすることで、かなり現実的に合格を狙えます。
合格率非公開の背景
英検1級の合格率は、2016年度以降公式には公開されていません。理由は公式に「このためです」とはっきり書かれていませんが、次のような事情があると考えられます。
1つは、英検が「資格試験」から「4技能の力を測るテスト」へと位置づけを広げていることです。CSEスコアとCEFRレベルとの対応を前面に出し、合格・不合格だけでなく、英語力の伸びや技能ごとの強み・弱みを見る方向に舵を切っています。
もう1つは、受験回ごとの難易度差です。合格率だけを出すと「今回は合格率が低いから難しい」「高いから簡単」と短絡的に見られやすくなります。実際には、問題の難易度に合わせてCSEスコアへの換算が調整されており、単純に合格率だけで難易度を語るのは正確ではありません。
そのため、今ネットでよく見かける「1級の合格率10%」「二次は60%」といった数字は、過去の公式データを元にした目安と考えるのが適切です。「今もほぼ同じ構図」と見てよいものの、「必ずこの数字どおり」とは言い切れません。
合格率から見た難易度
合格率10%というと「とんでもなく難しい」と感じるかもしれませんが、数字の意味を冷静に見ておくことが大切です。
まず、英検1級の受験者は、もともとかなり英語が得意な層に限られます。準1級合格者、TOEIC高得点者、留学経験者、英語教員などが多く、母集団自体のレベルが高い試験です。その中で「10人に1人」が合格するので、英語試験としては明らかに難関です。
一方で、大学入試のように「その1回で人生が決まる」試験ではなく、年3回受験できますし、一次に合格すると一定期間は二次試験のみを複数回受けられます。
たとえば、二次試験の実力が「1回あたり50%で合格するレベル」だと仮定し、二次を4回まで受けるとします。このとき4回連続で落ちる確率は0.5の4乗で6%ほどなので、「どこかで1回は受かる確率」は約94%になります。
このように、一次を突破できる実力さえ付ければ、複数回チャレンジで最終合格の可能性はかなり高まるという見方もできます。重要なのは、「一次合格レベル」まで英語力を上げることと、「二次は場数を踏む前提」で準備することです。

合格基準スコアと必要レベル
次に、「どれくらい取れば合格なのか」を具体的なスコアで整理します。英検はCSEスコアで合否が決まるため、合格率の数字だけでは、自分がどこまで来ているのか分かりにくいからです。
ここでは、一次・二次それぞれの合格基準CSEスコアと、素点(何割正解か)の目安、さらに必要な語彙数・読解レベルをまとめます。
一次二次のCSEと合格ライン
英検1級は、CSEスコアという共通尺度で合否が決まります。公式サイトでは、各級の合格基準スコアが明示されています。
1級の基準は次の通りです。
この基準値は、問題が難しくなっても簡単になっても変わりません。難しい回は1問あたりのCSEスコアが高くなり、やさしい回は低くなることで、トータルの公平性を保っています。
英検CSEスコアの仕組みやCEFRとの関係は、英検協会公式サイトに詳しくまとまっています。仕組みを一度確認しておくと、今の自分のスコアが世界基準でどのレベルかも見えてきます。
感覚的には、「各技能でおよそ7割前後を取れていれば合格圏」と考える受験指導者が多いです。ただし、次の項目で説明するように、素点の7割=必ず合格、という単純な話ではありません。
CSEと素点の関係と目安
CSEスコアと素点(何問正解したか)の関係は、直線的ではありません。1問ごとのCSEスコアは、回ごとの問題の難しさによって変わるためです。
たとえば、同じ「リーディング30問正解」でも、難易度が高い回ならCSEスコアが多くつき、やさしい回なら少なくつきます。そのため、自己採点だけではっきり「合格」「不合格」を判断することはできません。
とはいえ、勉強計画を立てる上では、おおまかな目安が欲しいところです。多くの塾や予備校では、次のような目安を使っています。
この「7割ライン」を超えていると、CSEスコア上も合格に届くケースが多くなります。逆に、どこか1技能が極端に低いと、他の技能で高得点を取ってもトータルが届きにくくなります。
成績表には技能別CSEスコアと「英検バンド」(合格ラインからの距離)が表示されるので、「どの技能をあと何点伸ばす必要があるか」が視覚的に分かります。このバンドを頼りに、学習の優先順位を決めるのが効率的です。
必要語彙数と読解レベル
英検1級で大きな壁になるのが語彙力です。一般に、合格に必要な語彙数は次のように言われます。
これを学校英語と比べると、日本の小中高で学ぶ単語は多くても約5,000語です。つまり、英検1級は「学校英語の2〜3倍の単語量」が必要になります。
1級で出る語彙の例を挙げると、propagation, recuperation, altercation, eviction, intrepid, erudite など、日常会話ではまず見かけない単語も多く含まれます。これらを単に見たことがあるだけでなく、「文脈の中で意味がとれる」レベルまでストックする必要があります。
読解レベルも高く、新聞の社説・ビジネス誌・科学や環境問題に関する解説記事などを、論理の流れを追いながら読めることが求められます。日本語でもやや難しい社会・経済・科学・医療・倫理などの話題が英語で出てくるため、「時事的な教養」も重要です。
リスニングも同じレベル感で、ニュース解説やインタビューなど、抽象度の高い内容を「要点を押さえながら聞き取る力」が必要になります。この語彙と読解・リスニングのレベルが、合格率10%の背景にあります。

他試験レベルと準1級ギャップ
次は、「自分の今のレベルから見て1級がどれくらい遠いか」を考えるために、他試験との対応や準1級とのギャップを整理します。
同じ英語試験でも、CEFRレベル・測る技能・試験の目的が違うので、単純な点数比較はできません。それでも、おおまかな対応を知っておくと、自分の現状と目標までの距離が見えやすくなります。
CEFRと他試験の対応
英検1級は、世界共通の指標であるCEFRではおおむねC1レベルにあたります。「高度な場面で自立して言語運用できるレベル」とされ、大学上級〜大学卒業程度の英語力です。
CEFR C1レベルを、他の代表的な試験スコアにざっくり当てはめると、次のようなレンジになります(あくまで目安であり、人によって差があります)。
| 指標 | 英検1級レベルの目安 |
|---|---|
| CEFR | C1 |
| TOEIC L&R | およそ870〜900点以上(900点前後が一つの目安) |
| TOEIC S&W | およそ360点前後 |
| TOEFL iBT | およそ80〜95点前後(高く見ると100超を想定する意見もあり) |
| IELTS | 6.5〜8.0程度(7.0〜がC1の中心) |
| GTEC | 1350〜1400点台 |
「TOEIC900を持っていれば必ず英検1級に受かる」というわけではありません。TOEICは主にリーディングとリスニングの2技能で、語彙の範囲や出題形式もかなり違います。
ただ、TOEIC L&Rで900点前後を安定して取れる人なら、「語彙・読解・リスニング」の土台は1級にかなり近くなっているので、ライティング・スピーキングと語彙の幅を伸ばしていけば、1級合格を十分狙えるゾーンといえます。
準1級とのレベル差
多くの受験者が気になるのが、「準1級から1級までのギャップ」です。実際、この差はかなり大きく、「準1級は取れたけれど、1級は何度も落ちている」という人も少なくありません。
代表的な違いを整理すると、次のようなイメージです。
準1級のライティングやスピーキングでも社会的な話題は出ますが、1級ではさらに「賛成・反対を明確にし、理由を2〜3個挙げて、具体例も交えながら論じる」といった、ディベートに近い力が求められます。
また、語彙レベルが大きく上がるため、準1級にギリギリ合格した段階で1級の語彙問題(大問1)に挑むと、25問中10問も正解できない、というケースも珍しくありません。この「語彙の壁」が、一次試験の合格率を押し下げている大きな要因です。
合格までの学習量の目安
では、準1級や他試験から1級合格を目指す場合、どれくらいの学習量を見込んでおくべきでしょうか。もちろん個人差は大きいですが、現実的な目安として、次のように考えると計画が立てやすくなります。
この中には、1級レベルの語彙学習、多読・多聴、ライティング・スピーキングの練習が含まれます。社会人で平日に1〜2時間、休日にもう少し時間を取るとすると、1〜2年が目安になってきます。
一方、すでにTOEIC900点以上・TOEFL iBT90点前後を持っている場合は、語彙とアウトプット(書く・話す)に集中すれば、半年〜1年で合格する例もあります。
大切なのは、「自分の現在スコアと1級CSE基準(一次2028・二次602)の差」を具体的な数字で見ることです。英検の成績表にはCSEスコアが出るので、そこから「あと何点伸ばすか」を逆算すると、学習の優先順位と必要時間のイメージがはっきりします。

学習戦略とメリット活用
ここまで、合格率・スコア・レベル感を整理してきました。最後に、それらを踏まえた現実的な学習戦略と、合格後のメリットの活かし方をまとめます。
限られた時間で合格を狙うには、「どこを独学で進め、どこから外部の力を借りるか」「何回くらいの受験を前提にするか」を最初に決めておくことが重要です。また、「合格した先にどんなメリットがあるか」を知っておくと、長期戦でもモチベーションを維持しやすくなります。
合格率を踏まえた勉強法
英検1級の合格率が低い最大の理由は「一次で多くが落ちる」ことです。したがって、学習の中心は一次対策、とくに語彙・読解・リスニング・ライティングに置くべきです。
おすすめの優先順位は、次のような流れです。
ライティングは一次の得点比重が高い上に、対策の効果が出やすいセクションです。型(導入・2〜3個の理由・結論)を固め、よく出る社会テーマ(教育、医療、環境、テクノロジーなど)の意見と論点をストックしておくと、合格率を大きく押し上げられます。
二次試験は、一次合格が見えてきた段階で並行して準備を始めるのが理想です。5つのトピックから1つを選んで2分間スピーチをする形式なので、「テンプレート+よく出るテーマのネタ集」を事前に作っておくと、本番での負担がかなり減ります。
独学と外部指導の使い分け
英検1級は、全てを独学で合格する人もいますが、多くの場合どこかの段階で外部のサポートを取り入れた方が効率がよくなります。特に、次の2つは独学では限界が出やすい部分です。
ライティングは、「内容は伝わっているが、文法・語法・構成が減点されている」といったポイントを自分では判断しづらい分野です。定期的に英検1級に詳しい講師に添削を受けると、「どの表現が不自然か」「構成をどう直すべきか」が明確になり、短期間でスコアが伸びやすくなります。
スピーキングも同様で、「自分では話せているつもりでも、発音や抑揚、論理の流れで損をしている」ことが多くあります。オンライン英会話や専用対策講座などで、本番形式の模擬面接を複数回こなすと、自信と安定感が大きく変わります。
逆に、語彙・多読・多聴は、教材さえ選べば独学との相性が良い分野です。ここはできるだけ自力で量をこなしつつ、「添削・面接」は外部に頼る、という使い分けがバランスの良い戦略です。
取得メリットと活用場面
英検1級は、合格までの負荷は大きいですが、それに見合うだけのメリットも多くあります。主なものを整理すると、次のようになります。
具体的には、一橋大学の一部学部などで英語資格を出願要件とするケースや、多くの国公私立大学で英検1級をCEFR C1として高く評価し、英語試験の代替や加点に使っています。制度は大学ごとに異なるため、志望校の入試要項を必ず確認しましょう。
また、全国通訳案内士(観光庁管轄の国家資格)では、英検1級を持っていると英語の筆記試験が免除されます。2023年度の全国通訳案内士試験の合格率は約12%であり、ここでも1級が大きな武器になることが分かります。
こうした入試・資格活用の全体像は、文部科学省や大学の公式情報にも整理されています。制度は毎年更新されるため、最新情報のチェックも忘れないようにしましょう。
就職・転職では、TOEICスコアが重視される場面が多い一方で、「英検1級」と書いてあると採用担当の目を引きやすいのも事実です。4技能すべてが一定水準以上であることが伝わるため、教育・旅行・外資系・貿易など、英語を実務で使う職種では強力なアピール材料になります。

まとめ
最後に、本記事のポイントを整理します。自分の現状と照らし合わせながら、これからの学習計画づくりに役立ててください。
- 英検1級の一次試験合格率はおよそ10%前後、二次試験は60%前後と推定され、構図としては「一次で多くが脱落」する試験である。
- 2016年度以降、合格率は公式には非公開だが、過去データと難易度の継続性から「現在もほぼ同じ水準」と考えるのが妥当であり、あくまで目安として捉える必要がある。
- 合格はCSEスコアで決まり、一次2028点・二次602点が基準となる。問題の難易度により1問あたりの配点が変わるため、「素点の何割=必ず合格」とは言えないが、4技能ともおおよそ7割前後を目標にすると現実的な合格圏になる。
- 英検1級はCEFR C1レベルに相当し、他試験のイメージではTOEIC L&R900点前後、TOEFL iBT80〜95点前後、IELTS6.5〜8.0程度が一つの目安となる。
- 準1級とのギャップは大きく、必要語彙数は1〜1.5万語、扱うトピックはニュース・ビジネス・学術など、より抽象的で専門的な内容が中心になる。特に語彙とスピーキングのハードルが上がる。
- 準1級合格直後から1級合格までは、おおよそ500〜800時間の追加学習が一つの目安であり、語彙強化・多読多聴・ライティング・スピーキング練習をバランスよく積む必要がある。
- 一次対策では語彙強化を最優先しつつ、新聞社説レベルの読解・ニュース英語のリスニング、型を意識したエッセイライティングに力を入れると、合格率を大きく押し上げやすい。
- 独学で進めやすいのは語彙・多読・多聴であり、ライティングの添削と二次面接対策は、英検1級に詳しい講師やオンラインサービスなど外部指導を取り入れた方が効率が高い。
- 英検1級取得のメリットは、大学入試での優遇・大学単位認定・全国通訳案内士など国家資格での英語試験免除・就職での評価など多岐にわたり、有効期限がないため長期的な資産となる。
- 合格率の数字だけを見ると厳しく感じるが、一次合格レベルまで実力を上げ、二次は複数回チャレンジする前提で考えれば、統計的には最終合格の可能性は大きく高まる。自分のCSEスコアと他試験スコアを出発点に、1〜2年スパンの現実的な学習計画を立てることが、1級への最短ルートになる。

