「シャドーイングが良いと聞くけれど、正しいやり方が分からない」「今の自己流で本当に力がついているのか不安」そんな方に向けて、この記事ではシャドーイングの全体像から、具体的な手順、レベル別の教材選び、録音を使った自己フィードバックまでを一気に整理します。
一度型を身につけてしまえば、あとは同じ流れを繰り返すだけです。難しい理論よりも、「明日からこの手順でやればいい」と分かる実践的な内容にしぼって解説します。
- シャドーイングの正しい定義と、他の音読トレーニングとの違いが分かる
- 初心者〜中級者向けの具体的なステップと練習フローが分かる
- プロソディー/コンテンツの2種類のシャドーイングの使い分けが分かる
- 録音や自己フィードバックを使って、効果を最大化する方法が分かる
シャドーイングの基本と結論
最初の章では、「そもそもシャドーイングとは何か」「他の音読との違い」「どのレベルから始めるべきか」を整理します。ここがあいまいなまま始めると、音だけを追いかける自己流トレーニングになり、時間をかけても伸びを実感しにくくなります。
結論から言うと、シャドーイングは中学英文法と基本単語がある程度わかる段階からスタートするのが安全です。そのうえで、「聞く → 理解 → リピート → 音読/オーバーラッピング → シャドーイング → 録音・フィードバック」という流れで進めていきます。
シャドーイングとは何か
シャドーイングとは、英語の音声を聞きながら、1〜2語ぶん遅れてそのまま声に出して追いかけるトレーニングです。もともとは同時通訳者の訓練として使われてきました。
ポイントは「聞き終わってから言う」のではなく、「流れている音にかぶせるように言う」ことです。耳で聞きながら、ほぼ同時に口を動かし、意味も取ろうとするので、耳と口と頭を同時に使います。
この性質のおかげで、次のような力が一度に鍛えられます。
負荷は高いですが、その分リスニング・発音・スピーキングに強く効く練習です。
他の音読トレーニングとの違い
よく混同されるトレーニングとの違いを、簡単に整理しておきます。
| トレーニング名 | やり方のイメージ | 主な目的 |
|---|---|---|
| リピート | 1文を聞き終わってからマネして言う | 発音・フレーズ定着 |
| 音読 | スクリプト(文字)だけを見て読む | 文法・語彙の定着、読みながらの理解 |
| オーバーラッピング | 音声を聞きながら、スクリプトを見て同時に読む | 発音・リズムを音声に合わせて身につける |
| 暗唱 | 覚えた英文を、音声なしで一人で言う | 表現の丸ごと暗記・スピーキング準備 |
| シャドーイング | 音声に1〜2語ぶん遅れて、何も見ずに追いかける | リスニング+発音+瞬時の理解 |
これらはどれが良い悪いではなく、役割が違います。おすすめは、
聞く → 理解 → リピート → 音読/オーバーラッピング → シャドーイング → 録音・フィードバック
という順番で組み合わせることです。いきなりシャドーイングだけをやると、「よく分からない音を、とりあえずマネしているだけ」になりやすく、効果が下がります。
どのレベルから始めるか
シャドーイングはとても効果が高い一方で、人によっては「まだ早い」場合もあります。
目安として、次のどちらもおおよそ当てはまるなら、始めて大丈夫です。
もしこれよりレベルが低い場合は、まずは次を優先した方が効率的です。
・単語帳や文法書で、基礎を固めること
・ゆっくりめの音声で、リピートや音読をすること
大手スクールの解説でも、シャドーイングは「中級以上向け」「基礎力を会話力に変えるトレーニング」という位置づけで紹介されています(参考:ECCのシャドーイング解説コラム)。
ただし、やり方を工夫すれば、初心者でも「超かんたん素材+スロースピード+短い時間」で少しずつ経験していくことは可能です。無理に難しい素材に挑戦しないことが重要です。

シャドーイングの種類と目的
次に、シャドーイングには大きく2種類あることを整理します。目的が違うので、どちらを重視するかを意識しておかないと、「音ばかり気にして意味が入ってこない」「逆に内容だけで、発音が自己流のまま」というアンバランスが起きます。
ここでは、プロソディー・シャドーイングとコンテンツ・シャドーイングという2つのタイプと、それぞれの使い分けについて見ていきます。
プロソディーシャドーイング
プロソディーとは、「音そのもの」ではなく、リズム・強弱・イントネーション(抑揚)・間といった、英語のメロディー全体のことです。
プロソディー・シャドーイングは、このメロディーをできるだけそっくりマネすることを目的にしたやり方です。意味理解はいったん横において、「とにかく音をコピーする」ことを優先します。
意識するポイントは次の通りです。
この練習をくり返すと、
・ネイティブらしいリズムで話せるようになる
・自分が発音できる音が増えるので、同じ音を聞き取れるようになる
という効果が出てきます。シャドーイングに慣れていない間は、まずこのプロソディー重視で練習するのが近道です。
コンテンツシャドーイング
コンテンツ・シャドーイングは、プロソディーとは逆に、内容理解を優先するシャドーイングです。
やり方は同じく「少し遅れて追いかける」ですが、次のことを意識します。
・話の流れをイメージしながら聞く
・「今、この文は何を言っているのか」をリアルタイムでとらえる
・頭の中で日本語に直さず、英語のまま感覚でつかもうとする
この練習のねらいは、「音を聞いた瞬間に意味が立ち上がる状態」に近づけることです。リスニングの専門的な説明では、
・音を単語として聞き取る段階(音声知覚)
・単語や文法、背景知識から意味を作る段階(理解)
の2段階があると言われますが、コンテンツ・シャドーイングでは、この2つを同時に回すトレーニングになります。
プロソディー・シャドーイングで「音を追いかけるのがあまり苦しくない」レベルになってから行うと、効果が出やすくなります。
段階ごとの使い分け
2つのシャドーイングは、どちらか一方だけをやるのではなく、段階によって比重を変えていくイメージで使います。
具体的には、1回の練習の中で、
・最初の数回は「音だけに集中するプロソディー・シャドーイング」
・慣れてきたら「内容を意識するコンテンツ・シャドーイング」
というように切り替えていくとバランスが良くなります。
さらに詳しく知りたい方は、大学の英語教育研究でもシャドーイングの効果が報告されています(例:東京外国語大学の英語教育関連ページなど)。

正しいやり方と具体的手順
ここからは、実際の「やり方」に入ります。この章では、教材の選び方と準備、1回の練習の流れ、録音と自己フィードバックのやり方まで、1ステップずつ説明します。
基本の流れは、
聞く → スクリプトで確認 → リピート → 音読・オーバーラッピング → シャドーイング → 録音・フィードバック
です。つまずいたら、1つ前のステップに戻れるようにしておくと安心です。
事前準備と教材の選び方
まずは「何でシャドーイングするか」を決めます。教材選びを間違えると、どんなに正しい手順でも続きません。
選ぶときのポイントは、次の3つです。
それぞれ簡単に見ていきます。
1. 興味が持てる内容か
シャドーイングは負荷が高いので、「ちょっと難しくても聞きたい」と思えるテーマの方が続きます。ビジネス、科学、自己啓発、ニュース、海外ドラマ風会話など、自分がワクワクする分野から選びましょう。
2. 長さがちょうどよいか
最初は「1分以内」を目安にし、長い音声は20〜50秒ごとに区切ります。上級者でも6〜15分くらいのTEDを1本選び、30秒ずつ区切って2か月かけてやり込む、といったスタイルが現実的です。
3. レベル(難易度)が合っているか
音源を一度聞いてみて、
・内容が7〜8割は分かる
・ただし、ところどころ聞き取れない部分がある
くらいがベストです。簡単すぎると退屈になり、難しすぎると音も意味も追えず、挫折の原因になります。
教材のタイプとしては、次のようなものが使いやすいです。
・音声付き書籍(レベル別に分かれているもの)
・英検・TOEICのリスニング教材
・ニュースサイト(VOA、NHK語学など)
・TED Talks(中級〜上級者向け)
どれを選ぶにしても、「音質が良い」「スクリプトがある」ことは必須です。
基本ステップと練習フロー
次に、1回の練習の流れをステップごとに説明します。初心者〜中級者の方は、まずこの型をそのままマネしてください。
STEP1:何も見ずに聞く
いきなり声を出さず、まずは音声だけを2〜3回聞きます。どれくらい分かるか、ざっくりで良いので自分で判定しましょう。
・80%以上:ほとんど分かる
・60〜80%:だいたい分かるが、よく分からない文もある
・40〜60%:ところどころしか分からない
40%以下なら、その素材は難しすぎる可能性が高いです。別のものに変えるか、同じ音源でももっと短く区切って使いましょう。
STEP2:スクリプト&意味確認
次にスクリプトを見ながら音声を聞き、「なぜ聞き取れなかったのか」を確認します。
・知らない単語だった
・知っている単語だが、音がつながっていて分からなかった
・文の構造が分からなかった
この3つのどれかに分けて、スクリプトにメモしていきます。必要に応じて、日本語訳も軽くチェックしておきましょう。
STEP3:一文ずつリピート
音声を一文ながしては止め、その文をマネして言います。このとき、
・意味を思い浮かべながら
・できるだけ音をそっくりマネする
ことを意識します。「意味がよく分からないまま音だけ追う」のは避けましょう。
STEP4:音読・オーバーラッピング
スクリプトを見ながら、音声と同時に読む練習です。最初はスピードについていくだけで精一杯でもかまいません。
・抑揚や強弱
・息継ぎの場所
もマネできるようになるまで、2〜5回ほど繰り返します。
STEP5:プロソディー・シャドーイング
いよいよシャドーイングです。最初はスクリプトを見ながらでも良いので、1〜2語ぶん遅れて追いかけます。音に集中し、意味はあまり気にしません。
慣れてきたらスクリプトを閉じて、耳だけを頼りに同じことを行います。
STEP6:コンテンツ・シャドーイング+録音
音を追いかけるのに少し余裕が出てきたら、今度は話の内容も意識しながらシャドーイングします。この段階では、
・頭の中で情景をイメージする
・「今の文は何を言った?」と自分に問いながらやる
といった意識が大切です。最後の1〜2回は録音しておき、後で自己チェックします。
録音と自己フィードバック法
シャドーイングの伸びを大きく変えるのが、「録音して聞き返すかどうか」です。やってみると、自分では上手くできているつもりでも、元の音声とかなり違うことが多いです。
録音を使った自己フィードバックの手順は、次の通りです。
チェックするときは、次のポイントを意識します。
・発音:聞き取れないほど崩れている単語はないか
・リズム:速くなりすぎたり、変なところで間が空いていないか
・抜け・言い間違い:単語を飛ばしていないか、違う単語を言っていないか
このとき、できていないところだけを数えるのではなく、
・最初よりスムーズに言えるようになったところ
・リズムが合ってきた部分
など、「うまくいった点」も必ず1つは書きます。そうするとモチベーションが長続きします。

効果の高め方と注意点
最後の章では、「どれくらいの頻度でやればいいか」「よくある失敗パターン」「シャドーイングを会話など他の技能につなげる方法」をまとめます。
シャドーイングは「やれば必ず上達する魔法」ではなく、やり方や位置づけを間違えると、時間のわりに伸びが小さくなります。この章のポイントをおさえておくことで、同じ時間でも効果を最大化できます。
頻度と時間配分の目安
どれくらいの頻度でどのくらいやれば良いのかは、多くの人が気になるところです。目安は次のように考えると良いでしょう。
1日の中での時間配分イメージ
・ウォームアップ(聞く+スクリプト確認):5〜10分
・リピート+オーバーラッピング:5〜10分
・プロソディー・シャドーイング:5〜10分
・コンテンツ・シャドーイング+録音:5〜10分
これで合計20〜40分くらいです。慣れてきたら、オーバーラッピングなど前半のステップを短くし、シャドーイングの回数を増やしてもかまいません。
同じセクションを4日以上続けると、内容を丸暗記してしまい、「聞いて処理する」のではなく「記憶でしゃべる」暗唱になりがちです。おおよそ2〜3日で区切り、8割くらいできたと感じたら次へ進むのが効率的です。
よくある失敗パターン
シャドーイングで挫折しがちなパターンと、その対策をまとめます。
① 難しすぎる教材
聞いても3〜4割しか分からない教材でシャドーイングをすると、音も意味も中途半端になり、ストレスばかりたまります。必ず「7割は分かる」レベルから始め、「少しだけ難しい」にとどめましょう。
② スクリプトに頼りすぎる
最初から文字を見てしまうと、耳で音をとる練習になりません。まず耳だけで聞いて、そのあと確認のためにスクリプトを見るという順番を守ることが大切です。
③ スピードだけ追う
とにかく速く音についていこうとすると、カタカナ英語でごまかし続けるクセがつきます。スピードは一度落としても良いので、元音声と同じ「リズムと発音」で言えることを優先しましょう。
④ 暗唱になってしまう
同じ部分をやりすぎると、音を聞かなくても言えるようになり、それは「暗唱」になります。暗唱自体は良いトレーニングですが、シャドーイングとは目的が違うので、2〜3日で区切って次へ進むのがおすすめです。
⑤ 基礎が足りない状態でやる
単語や文法の意味が分からないまま音だけマネしても、英語力はそれほど伸びません。語彙・文法の学習は、単語帳や文法書、講座などで別に進め、シャドーイングは「リスニングと発音を伸ばす柱」として位置づけるとバランスが良くなります。
会話や他技能へのつなげ方
「シャドーイングをやっていれば、勝手に話せるようになるの?」という疑問もよく聞かれます。結論としては、
シャドーイングだけでは「自由に話せる力」は足りないが、「話せるようになるための土台」を強くしてくれる
と考えるのが現実的です。
シャドーイングで身につくのは、
・よく使う文型やフレーズが、音ごと体に入る
・正しいリズムや音のつながりが身につく
・聞いた英語をすばやく処理するクセ
などです。これを会話に活かすには、次のようなステップを意識してみてください。
たとえば、シャドーイングで
“I gave her a pen.” を覚えたなら、
・I gave her a book.
・I gave him some advice.
・I gave them a call yesterday.
のように、名詞や代名詞を入れ替えて「型」を使い回してみます。こうすることで、シャドーイングでインプットした表現が、「自分の言葉」として出てくるようになります。
また、学習全体での位置づけとしては、
・語彙・文法:単語帳・文法書・読解
・リスニング・発音:シャドーイング中心
・スピーキング:オンライン英会話、英会話スクール、独り言練習
といった役割分担にすると、バランスが取りやすくなります。

総括
最後に、この記事のポイントを箇条書きで振り返ります。復習や実践の際のチェックリストとして使ってください。

