英語のRは、日本語話者にとってもっとも難しい音のひとつですが、仕組みを理解して順番に練習すれば、必ず「通じるR」に届きます。
この記事では、日本語のラ行との違いから、舌と口の具体的な形、綴り別のコツ、RとLの聞き分けまで、一連の流れで整理します。
発音専門の解説や英語教育サイトの知見をもとに、難しい理論より「どうやって出すか」「どう練習するか」に焦点を当てて説明します。
- 英語Rの正体と日本語ラ行との決定的な違いが分かる
- 「ウの口+舌の形」でRを出す具体的なフォームが身につく
- 綴り別・位置別のR発音とR/Lの対比練習のやり方が分かる
- アメリカ英語・イギリス英語それぞれのRとの付き合い方が分かる
英語R発音の結論と全体像
最初に、英語Rの全体像と「どこをゴールにするか」をはっきりさせます。ここがあいまいだと、いつまでも「これで合っているのかな…」と不安なまま練習することになります。
この章では、日本語ラ行との違いをおさえつつ、「巻き舌ではないR」のイメージと、現実的な到達目標を具体的に決めていきます。
英語Rと日本語ラ行の違い
結論から言うと、英語のRと日本語のラ行は、まったく別の音です。
日本語のラ行で代用しようとすると、どうしてもカタカナ英語になってしまいます。
主な違いは次の3つです。
日本語のラ行(/ɾ/)は、舌先が上の歯ぐきに「トン」と一瞬当たります。
つまり、舌先が前の方で動き、口の中の響きも明るめです。
それに対して英語のR(/ɹ/)は、舌先をどこにも当てません。
舌を少し奥に引き、舌先を上あごの近くまで持ち上げますが、上あごには触れません。
このとき、喉の奥がよく振動し、音が少しこもって聞こえます。
つまり、ラ行は「前で当てる音」、Rは「奥でこもらせる音」というイメージです。
この違いを頭に入れておくだけでも、今後の練習がずっとやりやすくなります。
巻き舌ではないRとは何か
英語のRは「巻き舌」と思われがちですが、多くの英語話者は巻き舌をしていません。
巻き舌(スペイン語やイタリア語のRのような「ルルル…」)は、舌先を震わせる音です。
英語のRでは舌先を震わせず、舌を軽く奥に引いて形を作るだけです。
そのため、英語Rを練習するときに、次のようなやり方は避けてください。
英語Rのイメージに近いのは、「のどを少しうならせるような音」です。
犬が「うー」とうなるとき、喉の奥が振動しますが、あの感覚に近いです。
そこに、舌を奥に引いた形を合わせると英語Rになります。
ここで大切なのは、舌先を動かして音を作るのではなく、舌全体の形と喉の響きで音を作るという考え方です。
通じるレベルのRのゴール像
「ネイティブ完全レベル」をいきなり目指すと、苦しくなって続きません。
まずは、次の3つができれば「世界中どこでも十分に通じるR」と考えてよいです。
たとえば right と light を、ゆっくりなら自分でもはっきり区別して言える。
この状態にまず到達することを、最初のゴールにしましょう。
細かいアクセントや地域差は、その先の話です。
多くの英語教育でも、「完璧さよりも、誤解なく通じること」を優先するようにすすめています。
たとえば、オンライン英会話の発音解説でも、「通じるR」を現実的な目標に置くことが強調されています(参考:Bizmates ブログのR発音解説)。

Rの仕組みと基本フォーム
ここからは、英語Rの「フォーム作り」に集中します。
舌の形や口の形を、スポーツのフォームのように体で覚えるイメージです。
個人差はありますが、正しい形が分かれば、数日〜数週間の練習で音は確実に変わってきます。
舌の位置と形の基本
英語Rの舌の基本形は、次の3ステップで作ると分かりやすいです。
まず、口を軽く開き、舌を少し奥に引きます。
このとき、舌の付け根のあたりが少し緊張し、舌全体が後ろに下がる感覚があります。
次に、舌先を上あごに近づけますが、触れてはいけません。
「今にも触れそうだけど、ギリギリ浮いている」位置が理想です。
この形のまま、声を出さずに息だけを「スー」と通してみてください。
舌の横のあたりから息が抜ける感覚があれば、形はかなり近いです。
ここでよくある疑問が、「本当にどこにも舌をつけちゃいけないの?」という点です。
正確には、「舌先」をどこにもつけなければOKです。
舌の側面が奥歯や上あごの後ろの方に軽く触れるのは問題ありません。
※「一切どこにも触れてはいけない」と思うと、力みすぎて舌がガチガチになり、逆に音が出にくくなります。
口の形と喉の響かせ方
舌と同じくらい大事なのが、口の形と喉の使い方です。
英語Rの基本フォームは、次のように覚えましょう。
「ウの口+舌を奥に引く+喉を響かせる」
まず、日本語の「ウ」を言うときのように、唇を前にすぼめます。
この「ウの口」を作ってから舌の形を作ると、英語らしいRに近づきます。
次に、喉の響きです。
日本語は、口の前の方で軽く音を出すことが多いですが、英語のRは喉の奥がしっかり振動します。
練習として、軽く「うー」とうなってみてください。
そのときの喉の振動を感じたまま、舌を奥に引き、「ウの口」で「る〜」と伸ばしてみます。
この「うなり声+舌の形」が、Rの感覚にとても近いです。
たとえば、right を練習するときは、次のようにします。
「うー(喉を響かせる)」→「ゥライ(R+ai)」→「right」。
最初は少しオーバーでもよいので、喉の振動と「ウの口」を強く意識しましょう。
そり舌型と盛り上がり型
実は、英語Rの舌の形には、大きく2つのタイプがあります。
「そり舌型」は、よく教科書に出てくる説明です。
舌先を軽く上にそらせて、上あごの近くまで持ち上げ、舌を奥に引きます。
一方、「盛り上がり型」は、舌先はあまり上げず、舌の真ん中あたりを上に持ち上げるパターンです。
舌の中央が山のように盛り上がり、舌先はやや下向きになります。
どちらのタイプでも、聞こえる音は同じRです。
国際音声記号(IPA)でも、英語のRは /ɹ/ と記され、舌先を震わせない「接近音」として扱われます。
どちらかが正しくて、どちらかが間違いというわけではありません。
大切なのは、自分にとって出しやすく、安定して出せる形を選ぶことです。
まずは一般的な「そり舌型」で試し、どうしても違和感がある場合は、「舌の真ん中を上げる」盛り上がり型も試してみてください。

Rの実践トレーニング
ここからは、実際のトレーニング方法に入ります。
「単音 → 音節 → 単語 → 文」と、ステップを分けて練習することで、ムリなく身につけることができます。
また、綴りごとのRの傾向を知っておくと、新しい単語を見たときにも迷いにくくなります。
単音から音節までの練習
まずは、R単体の音を安定して出せるようにします。
次の順番で練習するとスムーズです。
1. 単音「r〜」の練習
ウの口を作り、舌を奥に引いて舌先をどこにもつけず、「る〜」と長く伸ばします。
このとき、喉の奥がしっかり振動しているかを意識します。
2. 「ra, ri, ru, re, ro」に近い音
日本語のラ行を直接言うのではなく、「ウ+母音」の間にRをはさむイメージで出します。
たとえば、次のようなイメージです。
「ゥラ(ra)」「ゥリ(ri)」「ゥル(ru)」「ゥレ(re)」「ゥロ(ro)」
最初はゆっくり、1音ずつ区切って発音します。
3. 短い単語につなげる
次のような単語を、1語ずつ丁寧に練習します。
・red(ゥレッド)
・right(ゥライト)
・read(ゥリード)
・room(ゥルーム)など
最初は「ゥ」をわざと強めに入れてOKです。
慣れてきたら、少しずつ自然な強さにしていきましょう。
綴り別のR発音とコツ
次に、綴りごとのRのパターンを押さえましょう。
ここでは、よく出てくるものに絞って紹介します。
1. ar(car, start, arm など)
最初に「あ」を出し、そのまま声を切らずに舌先を上方向へ持ち上げます。
上あごに触れる直前で止め、こもった音で終わります。
car は「カー」ではなく、「カァr」に近い感覚です。
2. or, ore(short, more, born など)
「オ」を言いながら舌先を上に近づけ、「オーr」とこもらせて終えます。
more を「モーア」と母音2つにせず、「モーr」と一息で言うのがポイントです。
3. er, ir, ur(her, girl, work, hurt など)
これらは、どれも似たこもった音(/ɚ/, /ɝ/)になることが多いです(アメリカ英語)。
日本語の「あ」「え」などをはっきり言わず、口を少しだけ開け、「ウ」と「ア」が混ざったような響きで一息に出します。
舌先は最初から少し上がった状態で、上あごギリギリのところに近づけたままです。
4. air, are(air, pair, rare, care など)
「エ」を言いつつ、舌先を上あごの近くに持ち上げ、「エーr」と伸ばして終えます。
「エア」と2音で言わず、一つのまとまった音として出すのがコツです。
5. ear(ear, near, clear など)
多くの場合「イーr」のような音になります。
「イ」と言いながら舌先を持ち上げ、「イーr」とこもらせて終えます。
ただし heard, learn など、一部の ear は er/ir/ur と同じ音になるので、発音記号を確認しましょう。
このような綴りごとの母音+Rは、英語教育の研究でもよく取り上げられています。
たとえば、大学の英語教育センターの資料などで、母音+Rのパターンが詳しく解説されています(参考:大学の英語教育センター等の資料)。
自分でも辞書アプリなどで発音記号を確認し、「このスペルのときは、このR母音」という対応を少しずつ覚えていくと、単語の発音に自信がつきます。
単語内の位置別Rの練習
同じRでも、単語のどこにあるかで、難しさが変わります。
ここでは、位置ごとの注意点とおすすめの練習単語を紹介します。
1. 語頭のR(right, read, rain など)
語頭Rは、口と舌のフォームを作る時間があるので、比較的練習しやすいです。
ウの口をしっかり作り、「ゥライト」「ゥリード」「ゥレイン」と、最初の「ゥ」をやや強めに入れて発音しましょう。
2. 子音+R(tr, dr, br, gr など)
tree, drink, brown, great などです。
コツは、直前の子音に小さい「ゥ」を足すイメージです。
tree → 「トゥリー」
drink → 「ドゥリンク」
brown → 「ブゥラウン」
このときも、Rの部分では舌先をどこにもつけず、舌を後ろに引いた形をキープします。
3. 語末R(car, more, teacher など)
アメリカ英語では、語末Rもしっかり発音します。
car は「カー」で終わらず、「カーr」とこもったRで締めます。
teacher も「ティーチャー」ではなく、「ティーチャr」と軽くRを残します。
一方、イギリス英語では、多くの場合、語末Rはほとんど発音されません。
「カー」「ティーチャー」のように、長母音だけが聞こえます。
この違いについては、後の章でさらに詳しく説明します。

RとLの違いと関連知識
Rがある程度出せるようになったら、次のステップは「RとLの区別」です。
rice と lice、right と light など、R/Lの違いで意味が変わる単語はたくさんあります。
ここでは、構造の違いを整理し、最短で身につく対比練習と、米英のRの違いについて見ていきます。
RとLの構造と音色の違い
RとLの違いは、「舌先の場所」と「音の印象」に集約されます。
次の表で整理してみましょう。
| 項目 | R(/ɹ/) | L(/l/) |
|---|---|---|
| 舌先の位置 | どこにも触れない(上あごギリギリ) | 上の前歯のすぐ後ろの歯ぐきにしっかり当てる |
| 舌の位置 | 口の奥側に引く | 口の前寄り |
| 口の形 | ウの口で丸くすぼめることが多い | やや横に広げる/自然に開けることが多い |
| 音の印象 | こもって低めの音 | 明るくはっきりした音 |
たとえば、rice(R)と lice(L)を比べてみましょう。
rice では、舌先は浮いたまま、ウの口で喉を響かせます。
lice では、舌先を歯ぐきに軽く当て、「ラ」と明るく出します。
このように、RとLは、舌先が「浮いているか/当たっているか」が決定的な違いです。
まずは、この物理的な違いを体で覚えることが、聞き分けにもつながります。
最短で身につくRL対比練習
RとLを最短で身につけるには、「対比練習」が一番効果的です。
ここでは、有名なペアを使った練習手順を紹介します。
1. rice / lice
まず、Rバージョンの rice をゆっくり発音します。
ウの口を作り、舌先を浮かせたまま「r〜」を伸ばし、「r-ice」とつなげます。
次に、Lバージョンの lice を発音します。
舌先を上前歯の付け根にしっかり当て、「la-ice」のように出します。
2. pray / play
子音+R/Lのパターンです。
pray:p のあとに小さな「ゥ」を入れて「プゥレイ」。舌先は浮かせたまま。
play:舌先を上の歯ぐきに当て「プレイ」。
3. free / flea
free:f → 小さな「ゥ」→ R → i の順に、「フゥリー」と発音。
flea:舌先を当てて「フリー」。
これらを練習するときは、次の順番で声に出すと効果的です。
交互に言うときは、舌先の動きの違いをはっきり意識してください。
R→Lに移るときは、「舌先を浮かせる → 歯ぐきに当てる」、L→Rでは「歯ぐきから舌先を離して浮かせる」という切り替えになります。
また、RとLが両方入る単語(really, lawyer, royal / loyal など)も、よいトレーニング素材です。
really は、「R(ウの口で舌先を浮かせる)→ L(舌先を当てる)」という動きをはっきり分けて練習しましょう。
米英のRの違いと学び方
最後に、アメリカ英語とイギリス英語でのRの違いと、どちらを目指すかについて整理します。
共通点として、どちらも「舌先をどこにも当てない」「ウの口でこもらせる」という基本は同じです。
違いが大きく出るのは、母音の後のR、特に語末のRです。
アメリカ英語では、car, more, teacher など、母音の後のRもしっかり発音します。
car → 「カーr」
teacher → 「ティーチャr」
more → 「モーr」のように、Rのこもった響きが残ります。
イギリス英語では、多くの場合、語末や子音の前のRを発音しません。
car → 「カー」
teacher → 「ティーチャー」
more → 「モー」のように、長母音だけが残るイメージです。
学習の順番としては、まずアメリカ英語の「Rをしっかり発音するパターン」をおさえるのがおすすめです。
理由は次の通りです。
まずは「どの位置のRも、きちんと出せる状態」を目指し、その上で、聞き取りのためにイギリス英語風のRにも慣れていく、という順番が現実的です。

総括
最後に、この記事の要点をまとめます。復習用のチェックリストとして活用してください。
- 英語のRは日本語ラ行とは別物で、舌先をどこにも当てないこもった音である。
- 基本フォームは「ウの口+舌を奥に引く+喉を響かせる」の3点セットで作る。
- 「どこにもつけない」は舌先だけの話で、舌の側面が奥歯などに触れても問題ない。
- 舌の形は「そり舌型」「盛り上がり型」のどちらでもよく、自分が出しやすい型を選べばよい。
- 練習は「単音→音節→語頭R→子音+R→語末R」と、段階を踏んで進める。
- ar, or, er/ir/ur, air/are, ear など、綴りごとのR母音のパターンを意識すると単語の発音が安定する。
- RとLの違いは舌先の位置が決定的で、Rは浮かせる、Lは歯ぐきに当てると覚える。
- rice/lice、pray/play などのペアを使って、RとLを交互に言う対比練習が効果的である。
- アメリカ英語は母音+Rをはっきり発音し、イギリス英語は語末Rを弱める(または発音しない)傾向がある。
- 完璧さよりも「誤解なく通じるR」をまずゴールにし、毎日少しずつフォームの確認と音読を続けることが上達への近道である。
