Ankiで英語を学びたいけれど、「どの共有デッキを入れればいいのか分からない」「TOEICやIELTS、ビジネスなど目的ごとにどう組み合わせればいいのか知りたい」という人は多いです。
この記事では、頻度リスト系(NGSL・TSL・NAWL・BSL・SVL)から有名教材系(ターゲット1900・金のフレーズ・DUO3.0・実践IELTS英単語3500・4000 Essential English Words)まで、目的とレベルに合わせたおすすめ共有デッキと、その使い分けをまとめます。
また、「共有デッキだけでどこまで行けるのか」「何語ぐらいでTOEIC○点・IELTS○.○に届くのか」「発音やリスニング、スピーキングまでどう鍛えるか」「著作権や品質のリスクは?」といった疑問にも、具体的に答えていきます。
最後まで読めば、今日からどのデッキをどんな順番で回せばいいかがはっきり分かり、1日1時間の学習でも迷わず進めるようになります。
- 自分のレベルと目的に合う英語用Anki共有デッキが分かる
- TOEIC・IELTS・大学受験・ビジネスなど用途別の組み合わせ例が分かる
- 語彙数とTOEIC/IELTSスコア、「仕事で困らないレベル」の目安が分かる
- 音声付きデッキの使い方や、自作デッキに移るタイミングが分かる
英語用共有デッキの基本
まずは「Ankiとは何か」「共有デッキとは何か」「どんな英語学習ができるのか」を整理します。この土台が分かると、後半のデッキ選びや組み合わせが理解しやすくなります。
Ankiと共有デッキとは
Ankiは「フラッシュカード形式で覚えるためのアプリ」です。単語カードの表に英単語、裏に意味を書くイメージで、スマホやPC上で同じことができます。
一番の特徴は、覚えたかどうかに合わせて自動で復習タイミングを調整してくれることです。分かるカードはだんだん出てくる間隔が伸び、忘れやすいカードは短い間隔で何度も出てきます。これを「間隔反復(スペースド・リピティション)」と言います。
自分でカードを作ることもできますが、英語学習では多くの人が「共有デッキ」を使います。共有デッキとは、他のユーザーが作って公開した単語帳や例文集のことで、AnkiWebからダウンロードしてすぐに使えます。
たとえば「NGSL English-Japanese」「TOEIC Vocab」「TOEIC L&R TEST 出る単特急 金のフレーズ」などは、すでに多くの人が使っている定番デッキです。こうした共有デッキを使えば、本を一からAnkiに打ち込む手間を省けます。
英語学習でできること
英語用の共有デッキでできる主なことは、次の4つです。
語彙学習では、頻度リスト系のデッキがよく使われます。たとえば「NGSL」は日常的な英文の約92%をカバーする2801語で、「TSL」はTOEIC特有のサービス関連語を1259語、「NAWL」は学術英語用963語、「BSL」はビジネス英語用1700語前後を収録しています。
例文学習では、DUO3.0やビジネス英会話系の瞬間英作文デッキが代表的です。文ごとに覚えていくことで、単語の組み合わせ方や自然な語順も一緒に身につきます。
音声つきのデッキ(「TOEIC Vocab」「金のフレーズ」「4000 Essential English Words」など)を選べば、単語の意味と一緒に、発音とリスニングを同時に鍛えられます。あとで詳しく手順を説明しますが、「再生→シャドーイング→口パクでもいいので声に出す」を習慣にすると、スピーキングの土台も作れます。
公式アプリと類似アプリ
ここで一度、アプリの種類について整理しておきます。実は「Anki」と名前のつくアプリはいくつかあり、混乱しやすいからです。
基本的に、英語学習者が使うべきなのは次の組み合わせです。
公式サイトは apps.ankiweb.net です。ここからPC版をダウンロードし、AnkiWebのアカウントを作ると、PCとスマホ間で学習データを同期できます。
一方で「AnkiApp Flashcards」という似た名前のアプリがありますが、これは公式とは別物です。AnkiWebの共有デッキと完全には互換性がなく、この記事で紹介する多くのデッキは前提として「公式Anki+AnkiWeb」での利用を想定しています。
料金についてまとめると、PC版とAndroid版は無料、iOS版のみ有料(およそ3000円前後)です。頻度リストや試験用の高品質な共有デッキを長く使うなら、iOS版に課金する価値は十分あります。
公式の基本説明や利用イメージは、情報教育でも利用されているツール紹介ページ(例:大学共同利用機関(AC.JPドメイン例))なども参考になります。

目的別おすすめ共有デッキ
ここから、具体的な「おすすめ共有デッキ」を目的別に紹介します。基礎〜中級の汎用語彙、試験別(TOEIC・IELTS・大学受験など)、ビジネス・会話向けに分けて解説します。
基礎〜中級汎用語彙
英語が苦手な人、久しぶりに英語を学び直す人、これからTOEICやIELTSに挑戦する人は、まず「汎用語彙(どの分野でもよく出る基本単語)」を固めることが重要です。ここでは、そのベース作りに向いたデッキを紹介します。
おすすめは次の3つです。
まず最初に入れてほしいのが「NGSL English-Japanese」です。NGSLは「New General Service List」の略で、一般的な英文の約92%をカバーする高頻度語リストです。2801語と適度な量で、日常会話やニュースの土台になります。
NGSLを終えたあと、より広く語彙を増やしたい人には、アルクの「SVL12000」シリーズも便利です。「Level 2〜12」まであり、レベルごとに1000語ずつに区切られています。自分のレベルに合わせて、たとえばLevel 2〜5だけ、など段階的に進められます。
音声も一緒に押さえたい人は、「★英単語学習【音声付き】★」のような総合単語デッキを1つ入れておくと、通勤中に「聞き流し+Anki」で効率アップが狙えます。
試験別おすすめデッキ
次に、TOEIC・IELTS・大学受験など、試験ごとのおすすめ共有デッキを見ていきます。ここで大事なのは、「頻度リスト(NGSL系)+試験専用デッキ」という二本立てで考えることです。
TOEICなら、次の組み合わせが鉄板です。
NGSL+TSLで、TOEICに出る単語の9割以上をカバーできると言われています。そこに「金のフレーズ」と「TOEIC Vocab」を加えると、実際の試験フレーズと例文、音声まで一気に押さえられます。
IELTSやアカデミック寄りの試験では、次のデッキが有力です。
「実践IELTS英単語3500」は、IELTS受験者の定番単語帳のAnki版です。これとNGSL+NAWLを合わせると、大学レベルの英文や論文、海外の記事を読む力につながります。また、「4000 Essential English Words」は英英形式で、英語を英語のまま理解する力を伸ばすのに最適です。
大学受験や基礎〜中級の総復習には、次のような教材準拠デッキが効果的です。
「ターゲット1900」は日本の受験生の定番で、基礎〜標準レベルの単語をバランスよく押さえられます。「DUO3.0」系のデッキは例文ベースで語彙をまとめて覚えられるので、社会人のやり直し英語にも向いています。
ビジネスと会話向け
仕事で英語を使いたい人や、日常会話をスムーズにしたい人には、ビジネス語彙+会話フレーズの二本立てがおすすめです。
ビジネス語彙向けの代表的なデッキは次の通りです。
BSLはビジネスニュースや雑誌、ビジネス番組などでよく使われる語を中心に1700語ほど収録しています。NGSLと合わせて回すと、一般的なビジネス英語教材の語彙をほぼカバーできると言われています。
会話向けには、瞬間英作文系のデッキが向いています。
これらは「日本語→英語」の形式で、画面に出た日本語を見て数秒以内に英語で言う訓練を想定しています。単語テストとは違い、スピーキングの反射神経を鍛えるのに向いています。
さらに、イディオムや自然な表現を増やしたい中級以上の人には、「Essential Idioms in English」のような英英のイディオムデッキも良い選択肢です。

選び方と使い方の実践
ここからは、紹介したデッキを「どう選び」「どう組み合わせ」「どう使うか」という実践編です。自分のレベルと時間に合わせた設計を考えましょう。
レベル別デッキ選定基準
デッキ選びで一番大事なのは、「今のレベルより少し上」を狙うことです。難しすぎるデッキは続かず、簡単すぎるデッキは時間のムダになりがちです。
ざっくりとしたレベル別の目安は次の通りです。
また、「英和(英→日)デッキ」と「英英(英→英の説明)デッキ」の使い分けも、レベルに応じて決めるとよいです。
目安は次のようになります。
・初級〜中級前半:英和デッキをメインに使う(NGSL英日・ターゲット1900・金のフレーズなど)
・中級後半〜上級:英和+英英をミックスする(NGSL+4000 Essential English Words+NAWL/BSLなど)
特に「4000 Essential English Words」は、シンプルな英語で意味が説明されるので、最初に挑戦する英英デッキとしてちょうど良い難易度です。
用途別デッキ組み合わせ
次に、具体的なシナリオごとのデッキ組み合わせ例を示します。ここでは、「社会人でTOEICも仕事も頑張りたい人」「IELTSを目指す人」「英英に移行したい中級者」という3パターンを取り上げます。
① 社会人ビジネス用途(TOEIC700〜800+仕事で困らない英語)
おすすめの順番は次の通りです。
これに加えて、ビジネス英会話の瞬間英作文デッキを1つ入れておくと、「読む・聞く」だけでなく「話す」の基礎も作れます。
② IELTS6.0〜7.0を目指す学習者
IELTSで6.0〜7.0を目指す場合、語彙数の目安はおよそ6000〜12000語と言われます。デッキの構成としては次が現実的です。
これにより、「大学入試+TOEIC+アカデミック」の広いレンジをカバーできます。
③ 英英に移行したい中級者
「英和に少し飽きてきた」「英語を英語のまま理解したい」という中級者には、次のミックスがおすすめです。
最初は1日の新規カードの半分を英和、半分を英英にすると負担が軽くなります。慣れてきたら、徐々に英英の割合を増やしていくとよいです。
音声活用と技能強化
「単語は覚えても、発音やリスニング、スピーキングが苦手」という人は多いです。音声付きデッキを正しく使えば、単語暗記と同時にこれらの技能を底上げできます。
音声活用に向いた代表的なデッキは次の通りです。
これらのデッキを使う場合、1カードあたり次のような流れで学習すると効果的です。
- 音声を1回聞きながらテキストを目で追う(リスニング+リーディング)
- 音声を止めて、音声なしでもう一度自分で声に出す(音読)
- 可能なら、音声に少し遅れて重ねるように話す(シャドーイング)
1日1時間しか取れない場合は、「30分を単語の意味確認+復習、30分を音声付きカードだけに絞る」といった時間配分がおすすめです。
また、忘却曲線の考え方に沿うなら、「学習後1時間→1日→1週間→1ヶ月→半年」といった間隔で復習するのが理想とされます。Ankiはこの流れを自動で組んでくれるため、ユーザーは「毎日アプリを開く」だけに集中すればよい仕組みです。この考え方は、学習心理学の研究をまとめた解説(例:国立教育政策研究所 など)でも触れられています。

限界と注意点Q&A
最後に、「共有デッキだけで本当に十分なのか」「著作権は大丈夫なのか」「何語くらいでどのスコアに届くのか」といった不安や疑問に答えていきます。ここを押さえておくと、安心して長くAnkiを使い続けられます。
共有デッキの限界と自作
共有デッキはとても便利ですが、「それだけで完結するか」というと、答えはNOです。強いのは「みんなに共通する基礎〜頻出語彙」であり、個々の仕事や趣味に特化した語彙まではカバーしきれません。
共有デッキでカバーしやすい範囲は次のようなものです。
一方で、自作デッキで補うべきなのは、次のような語彙です。
・自分の専門分野の用語(IT・医療・法律・金融など)
・自分の会社・業界でよく出る表現(社内用語・製品名など)
・自分がよく読むメディアや本に出てきた知らない単語
目安としては、「NGSLや試験用デッキで3000〜5000語程度を回し終えたころ」から、自作カードを少しずつ追加するとスムーズです。いきなり全部自作にすると負担が大きいため、最初は1日1〜3枚を目安に、仕事や読書で出会った単語を登録していくとよいです。
著作権と品質リスク
共有デッキには、以下のようなリスクもあります。
市販の単語帳や問題集を、そのまま丸ごと共有することは、著作権の観点から問題になる可能性があります。グレーなものも多いため、「これは明らかに市販本の完全コピーだな」と感じるものは、原則として自己責任になります。
リスクを下げるための実践的な対策は、次の通りです。
- 評価やダウンロード数が多いデッキを優先する(一定の品質が期待できる)
- 気に入ったデッキは早めにローカルにバックアップを取る(公開停止リスク対策)
- 訳がおかしいと感じたカードは、必ず自分で修正するか、カードを「無効」にする
※ネット上の共有デッキを使う場合は、「公式に公開されている頻度リスト(NGSL/NAWLなど)」か、「自分がすでに購入した書籍の補助として使う」形にとどめるのが安全です。
語彙数とスコア目安
最後に、「どれくらいの語彙数でどんなレベルに届くのか」をざっくり整理しておきます。もちろん個人差はありますが、複数の調査や試験運営団体の資料をもとにすると、次のようなイメージになります。
| 語彙数の目安 | TOEICスコアの目安 | IELTSスコアの目安 | レベルのイメージ |
|---|---|---|---|
| 約3,000語 | 〜600点前後 | 〜5.0程度 | 高校卒業レベルの基礎 |
| 約5,000語 | 〜730点前後 | 〜6.0程度 | 国内ビジネスで最低限困らない |
| 約8,000〜9,000語 | 〜860点前後 | 〜6.5〜7.0程度 | 英語人材としてかなり重宝される |
| 約10,000語以上 | 900点+ | 7.0+程度 | 専門書や英語論文も自力で読める |
仕事で困らないレベルを目指すなら、目標は5,000〜10,000語レンジに入っていること、と考えると現実的です。これは、TOEICで言えば730〜860点前後、IELTSで言えば6.0〜7.0におおよそ対応します。
NGSL(約2800語)+TSL(約1259語)+BSL(約1700語)+NAWL(約963語)+ターゲット1900、金のフレーズ、IELTS3500などを組み合わせて回せば、このレンジにかなり近づくことができます。
もちろん、語彙だけでスコアが決まるわけではありませんが、「自分は今どのくらいを目指しているのか」を意識してデッキを選ぶと、勉強の方向性がぶれにくくなります。

まとめ
最後に、この記事の要点をまとめます。迷ったときは、ここだけ読み返してもらえれば、再スタートしやすくなるはずです。

