シャドーイングを始めると、多くの人が「聞こえるのに口が回らない」「音声についていけない」と感じます。
これは英語力が足りないからではなく、やり方・条件・準備が合っていないことがほとんどです。
この記事では、シャドーイングで口が回らない原因を整理しながら、今日から試せる具体的な改善ステップをまとめます。
シャドーイングに向いていないのではなく、負荷のかけ方と順番を整えれば、必ず楽になっていきます。
- シャドーイングで口が回らないのは普通なのかが分かる
- 自分がつまずいている原因を具体的に特定できる
- 音読・オーバーラッピングから始める正しい練習の順番が分かる
- 挫折しないための負荷調整と「やめどき・続けどき」の判断基準が分かる
口が回らないのは普通か
最初の章では、「口が回らないのは自分だけなのか?」という不安を解消しつつ、どこまでが普通の範囲なのかを整理します。
そのうえで、「聞けるのに話せない」理由をリスニングとスピーキングの違いから説明します。
多くの学習者に起こる現象
まず、シャドーイングで口が回らないのは、ごく普通のことです。
特に次のような人は、ほぼ全員が同じ壁にぶつかります。
英語と日本語では、口の動かし方も、リズムも、使う筋肉も違います。
今までほとんど英語を声に出してこなかったなら、最初は舌がもつれて当たり前です。
ピアノを初めて触った人が、いきなり速い曲を弾けないのと同じで、筋肉やリズムの「慣れ」の問題が大きいです。
聞けるのに話せない理由
「音声は理解できているのに、口がついていかない」という相談はとても多いです。
これは、リスニングとスピーキングが別のスキルだからです。
リスニングは、耳で聞いた音を頭の中で処理する「受け身のスキル」です。
一方、スピーキングは、頭の中で文を組み立てて、口と舌の筋肉を動かし、瞬時に音を出す「能動的なスキル」です。
つまり、次の2つのギャップが存在します。
このギャップは、特に中級レベル(ある程度聞けるが話すのが難しい層)で強く出ます。
ですから「聞き取れているのにできない自分はおかしい」とは考えなくて大丈夫です。
むしろ、「リスニングは育ってきたので、これから発話側を鍛えていく段階に来た」と考えるのが自然です。
どこまでが普通の範囲か
とはいえ、「普通」と言われても不安は残ります。
次のような状態なら、まだ「普通の範囲」と考えて大丈夫です。
反対に、次のような場合は、やり方か条件を大きく見直した方がよいサインです。
この場合でも、英語の才能がないのではなく、教材レベル・練習の順番・速度のどれか(または全部)が合っていないだけです。

口が回らない主な原因
次に、「なぜ口が回らないのか」をもう一歩くわしく分けて考えていきます。
原因を知ると、自分に合った対策が見えやすくなります。
速度と教材レベルの問題
もっとも多いのが、「速さ」と「難しさ」が今の自分と合っていないパターンです。
主なポイントは次の2つです。
たとえば、ニュース・海外ドラマ・専門分野の講演などは、ネイティブでも集中して聞くような内容です。
このレベルの音声を、準備なしのシャドーイング教材にすると、次のような悪循環が起きます。
目安として、教材は「内容の8割程度は分かるもの」を選びます。
また、1つの音声は40秒〜1分程度にして、1日30回前後くり返せば「なんとかこなせる」レベルの難易度が理想です。
速度に関しては、最初から1.0倍速にこだわる必要はありません。
多くの学習サービスでも、0.5〜0.75倍速から始めて、慣れたら1.0倍速に近づける方法をすすめています(たとえば、レアジョブ英会話の学習コラムなどでも、速度調整の重要性が解説されています。参考:レアジョブ英会話 公式コラム)。
意味理解と準備不足
2つ目の大きな原因は、「準備なしでいきなりシャドーイングから始めている」ことです。
シャドーイングはもともと、通訳養成でも使われる高度なトレーニングです。
本来は次のような準備ステップを踏んでから行うものです。
この下準備をしないと、練習中に次のようなことが起こります。
つまり、練習中に同時にやることが多すぎて、処理がパンクしている状態です。
特に初心者〜中級者は、「文章を読む → オーバーラッピング → そのあとにシャドーイング」という順番を守ることで、口がかなり回りやすくなります。
発話経験と音声変化の壁
もう1つ見落とされがちな原因が、「英語を声に出す経験が少ないこと」と「英語特有の音の変化」に慣れていないことです。
日本語と違い、英語には次のような音の特徴があります。
これらを意識せず、日本語のように一語一語はっきりカタカナ発音で言おうとすると、発音する音の数が増えすぎてしまいます。
その結果、本来1秒で言うフレーズを、2〜3秒かけて発音することになり、音声からどんどん遅れていきます。
また、英語を日常的に話していない人は、口周りの筋肉が英語モードになっていません。
R・L・THなど、日本語にない音を繰り返し出そうとすると、それだけでかなりの負荷がかかります。
この2つの理由から、最初の数週間〜1か月は、口が思うように動かないのが普通だと考えてください。

改善のステップと練習法
ここからは、「口が回らない」をどう改善していくか、具体的な手順と練習法を紹介します。
ポイントは、いきなり完璧なシャドーイングを目指さず、「素材選び → 音読 → オーバーラッピング → シャドーイング」と段階を踏むことです。
素材選びと条件設定
まずは、シャドーイングに使う素材と条件を整えます。
ここが合っていないと、どんなに頑張っても「できない練習」を続けることになってしまいます。
おすすめの条件は次のとおりです。
1日でたくさんの教材をこなすより、1つの素材を数日かけてやり込み、完璧に近づける方が効果的です。
また、公的機関が出している英語学習サイトや、大学などの教材も、レベル別に音声が用意されていて使いやすいです。
たとえば、放送大学や大学の英語教育センターなどの教材ページには、学習者向けの音声が公開されていることがあります(例:東京大学 英語学習支援ページ)。こうしたサイトは教材の質も信頼できます。
音読とオーバーラッピング
素材を決めたら、いきなりシャドーイングをせず、まずは「音読」と「オーバーラッピング」で土台を作ります。
おすすめの流れは次のとおりです。
特にオーバーラッピングは、シャドーイングの一歩手前としてとても有効です。
スクリプトを見ながらなので、次の単語を予測しやすく、「何を言えばいいか分からない」という不安を減らせます。
この段階では、次の3点を意識してください。
TOEIC600点前後までの人や、英語を声に出すのがほぼ初めての人は、最初は「オーバーラッピングだけ」を徹底してもかまいません。
この段階だけでも、リズム・発音・口の筋肉がかなり鍛えられます。
段階的シャドーイング手順
音読とオーバーラッピングに慣れてきたら、いよいよシャドーイングに進みます。
ここでも、一気に「完璧」を目指さず、段階を分けて負荷を上げるのがポイントです。
おすすめの段階は次の3ステップです。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① スクリプト付きシャドーイング | スクリプトを見ながら、音声より少し遅れて声を出す | 文字を見つつ「耳の情報」を優先して真似る |
| ② 部分シャドーイング | 1文〜短いフレーズごとに区切ってシャドーイング | つまずく部分を重点的にくり返す |
| ③ 通しシャドーイング | スクリプトなしで、全体を通してシャドーイング | 最初は意味より「音の再現」を優先 |
特にステップ①の「スクリプト付きシャドーイング」は、完全な耳だけのシャドーイングがきつい人におすすめです。
ただし、文字だけを追うとリスニングの練習にならないので、「目は補助・耳が主役」という意識を持ちましょう。
通しシャドーイングに進んだ段階では、次の2つのモードを使い分けると効果的です。
最初は音重視で口慣らしをして、慣れてきたら意味も同時に追う、という順番にすると、負荷のバランスが取りやすくなります。

挫折しない工夫とQ&A
最後の章では、「きつすぎて続かない」「本当にこれで合っているのか不安」という声に答えていきます。
代替トレーニングや、どのくらい続ければよいかの目安、「やめる・緩める」の判断基準も整理します。
きつい時の代替トレーニング
体調が悪い日や、仕事で疲れ切っている日は、フルのシャドーイングはつらいものです。
そんな日は、負荷を下げた「代替メニュー」に切り替えても大丈夫です。
役割ごとに整理すると、次のようになります。
「今日はどうしても口が回らない」と感じたら、思い切ってシャドーイングをやめて、音読やオーバーラッピングだけにするのも立派な選択です。
大事なのは、完全に英語から離れず、何かしら「英語を聞く・声に出す」行動を続けることです。
続ける期間と効果の目安
「どのくらい続ければ口が回るようになるのか?」という疑問も多いです。
個人差はありますが、次のようなイメージを持っておくと、期待値のコントロールがしやすくなります。
初日はほとんど言えなくても問題ありません。
2日目・3日目と続けるうちに、「昨日よりは楽」「このフレーズはスムーズに出る」という感覚が少しずつ増えていきます。
また、同じ素材で、ディクテーション(聞こえた英文を書き取る)や録音しての自己チェック(self-assessment)を組み合わせると、「どこが聞こえていないか」「どこで詰まっているか」が見えやすくなります。
研究ベースでも、録音+自己評価を取り入れることで、発音とスピーキング全体の向上につながることが報告されています(self-assessment は大学の英語教育でもよく使われている手法です)。
よくある疑問と判断基準
最後に、シャドーイングでよくある疑問と、それに対する実践的なガイドラインをまとめます。
大切なのは、シャドーイングを「万能の魔法」と思わないことです。
リスニングとスピーキングには確かに効果的ですが、レベルや目的に合わない形で使うと、逆に自信を失ってしまうこともあります。
自分のペースで負荷を調整しながら、「続けられるやり方」を探していきましょう。

総括
最後に、この記事の要点をまとめます。
- シャドーイングで口が回らないのは、多くの学習者に共通する自然な現象であり、能力不足や「向いていない」からではない。
- 主な原因は、音声の速度・教材レベルのミスマッチ、意味理解や発音確認などの準備不足、発話経験の少なさ、英語特有の音声変化への未慣れに分けられる。
- 教材は「内容理解8割・40秒〜1分程度・1日30回でなんとかこなせる難易度」を目安に選び、速度は0.5〜0.75倍から始めて最終的に1.0倍を目指す。
- 練習の基本ステップは「スクリプトで意味と発音を確認 → 音読 → オーバーラッピング → スクリプト付きシャドーイング → 部分 → 通し」の順で、段階的に負荷を上げていく。
- スクリプトを見ながらのシャドーイングや、リスニングのみの日、音読だけの日があってもよく、「耳を主役にしながら英語に触れ続けること」が最重要である。
- 発音・リズム面では、音声変化(連結・消失・弱形など)を聞こえたまま再現し、強弱と息継ぎの位置(チャンク)を意識して、英語らしいリズムを身につける。
- 同じ素材を最低3〜4日、1か月単位でくり返す前提で考えると、口の動きやリスニングの負荷が徐々に下がり、変化を実感しやすい。
- シャドーイングがつらすぎるときは、オーバーラッピング・音読・ディクテーション・録音+自己評価などと組み合わせて、無理なく続けられる学習サイクルを作る。
- 「できない=才能がない」と決めつけるのではなく、負荷の調整や方法変更はいつでもしてよいと自分に許可しつつ、「やり方を変えれば必ず楽になる」と考えて取り組むことが大切である。

