シャドーイングを始めると、多くの人が「自分の声で音源が聞こえない」「英語がごちゃごちゃしてイライラする」という壁にぶつかります。
この状態のままがんばっても、実はあまり効果がありません。
原因の多くは「音量バランス」と「手順ミス」です。
この記事では、リスニングを伸ばすという目的から見て、何を優先して聞くべきか、どんな手順・環境ならうまくいくのかを、順番に整理していきます。
自分の声が邪魔に感じている人でも、今日からストレスをかなり減らせるはずです。
- 「自分の声で音源が聞こえない」主な原因と切り分け方が分かる
- 正しいシャドーイングの流れと、1ステップごとの目的が分かる
- 音源と自分の声の最適な音量バランス・環境づくりが分かる
- 教材レベル調整や他トレーニングとの使い分け方が分かる
自分の声で聞こえない原因と結論
まずは「なぜ聞こえないのか」を整理します。
ここを間違えると、がんばっても空回りになりやすいからです。
原因は大きく分けて「音量バランス」「レベル・手順」「何を聞こうとしているか」の3つです。
この章では、その3つをシンプルに押さえたうえで、「シャドーイング中は何を最優先で聞くべきか」という結論までたどり着きます。
音量バランスと声量の問題
もっとも多い原因は、とても単純です。
自分の声の方が音源より大きい、あるいはほぼ同じ大きさでぶつかっている状態です。
2つの音が同時に鳴ると、一般的には「大きい方」しか聞こえません。
ですから、自分の声が会話レベルの大きさだと、どうしても教材の英語が負けてしまいます。
対処の軸はシンプルで、「教材音声 > 自分の声」のバランスにすることです。
具体的には次のような調整が有効です。
特にイヤホンは、自分の声よりも音源を優先して聞きやすくなるので、シャドーイングと相性が良いです。
ただし両耳をふさぐと、自分の声がほとんど聞こえず不安になる人もいます。
その場合は、片耳だけイヤホンにするか、スピーカー再生で音量を上げる方がやりやすいでしょう。
音自体が物理的に聞こえない状態では、どれだけ回数をこなしてもリスニングは伸びません。
まずは「聞こえる環境づくり」を最優先にしてください。
教材レベルと手順ミス
次の原因は、教材レベルと手順の問題です。
よくあるのが、「いきなり難しいニュース音声でシャドーイングだけをやる」というパターンです。
この場合、「自分の声で聞こえない」のではなく、そもそも英語の音が速すぎて、意味と音を結びつける余裕がないだけということも多いです。
目安としては、次の2つがそろっていない教材はレベルオーバーです。
また、正しい手順を踏まず、いきなりシャドーイングから始めると、「聞く」「意味を取る」「口を動かす」を同時に行うことになり、負荷が高すぎます。
その結果、「ごちゃごちゃして何も入ってこない」という感覚になります。
本来は、事前に「聞くだけ」「スクリプトを見ながら」「オーバーラッピング」の段階を通ってから、本番のシャドーイングに入るのが基本です。
詳しい流れは後の章で説明しますが、もし今の時点で「毎回別の長いニュースを、いきなりシャドーイングしている」なら、やり方を見直した方がよいサインです。
何を優先して聞くべきか
ここで一番大事な結論をはっきりさせます。
シャドーイングの目的がリスニング強化であるなら、練習中は「自分の声」ではなく「音源」を優先して聞くべきです。
よくある悩みとして、「自分の声がモニターできないから不安」「ちゃんと言えているかリアルタイムで分からない」というものがあります。
ですが、リアルタイムで自分の声を細かく聞き取ることは、上級者でもかなり難しい作業です。
それを同時にやろうとすると、肝心の「英語音声を聞き取ること」への集中が途切れてしまいます。
おすすめは次のスタイルです。
つまり、リアルタイムでは「音源>自分の声」、振り返りのときに「自分の声>音源」という役割分担にするイメージです。
この方が負担が少なく、結果的に音の聞き取りも、発音の改善も両方進みやすくなります。
なお、日本語シャドーイングについてもよく質問がありますが、リスニングや語彙など「英語力アップ」が目的なら、日本語音源でのシャドーイングをわざわざ行う必要性は高くありません。
通訳訓練など、特殊な目的がある場合をのぞき、基本は英語音源のシャドーイングを軸に考えてよいでしょう。

正しいシャドーイングの流れ
次に、「自分の声で聞こえない」問題を避けつつ、効果を最大にするシャドーイングの手順を整理します。
多くのつまずきは、「いきなりシャドーイングだけ」をしていることが原因です。
ここでは、新しい教材を使うときの一連の流れと、その中で小声シャドーや録音をどう組み込むかを説明します。
事前リスニングと理解確認
新しい音源を使う1日目は、いきなりシャドーイングに行かず、次の流れで進めます。
この段階の目的は、「全体の内容」「知らない単語」「スピード感」をざっくりつかむことです。
スクリプトを見たときに、9割くらいの内容が理解できない教材は、今のレベルには難しすぎます。
このとき、信頼できる教材かどうかも大切です。
たとえば、英語教育研究の情報や音声教育に関する基礎知識は、大学や教育機関の資料が参考になります。
英語教育全般の動向を知りたい場合は、高専などの英語教育のページのような、教育機関の情報も参考になります。
事前リスニングを「雑に聞き流す時間」と思う人もいますが、実はとても重要なステップです。
ここで内容をおおよそつかんでおくと、後のシャドーイングで「音と意味を結びつける作業」がぐっと楽になります。
オーバーラッピングから移行
内容が分かったら、次はオーバーラッピングです。
オーバーラッピングとは、スクリプトを見ながら、音源と同じタイミングで声を出す練習です。
この段階の狙いは、「正しい音を聞きながら、自分の口を同じリズムで動かす」ことです。
音源と自分の声がぴったり重なるので、自分の声が音源にかき消されていても問題ありません。
むしろ、「音源の声に乗るイメージ」で、リズムとイントネーションを体に覚えさせる時間です。
オーバーラッピングで意識したいポイントは次の3つです。
この段階でつまずくなら、スピードが速すぎるか、文章量が長すぎる可能性が高いです。
その場合は、再生速度を少し落とすか、もっと短い・やさしい教材に切り替えましょう。
オーバーラッピングがある程度スムーズにできるようになったら、いよいよスクリプトなしのシャドーイングへ移行します。
小声シャドーと録音チェック
シャドーイング本番では、「音源を少し遅れて追いかける」ことがポイントです。
ここで、「自分の声で音源が聞こえない」問題が出やすくなります。
最初の対策は、小声で行うことです。
声の大きさは、家の中で独り言を言うよりも、さらに小さいレベルを目安にします。
それでも音源が聞き取りにくい場合は、思い切って「口パク」でやってみてもかまいません。
小声シャドーや口パクでも、次のような効果があります。
ただし、口パクだけをずっと続けていると、発音・イントネーションなど「話す力」の伸びは限定的になります。
リスニング強化を中心にする時期でも、週に数回はしっかり声を出す日を作るとバランスが良いです。
そして、自分の声のチェックは、リアルタイムではなく録音で行うのがおすすめです。
スマホの録音アプリなどで、自分のシャドーイングを録音し、あとから聞き直してみてください。
お手本と自分の声を交互に聞き比べると、「聞き取れていない音」「言えていない音」がとても分かりやすくなります。
※録音して満足せず、「どこが違うか」「次はどこを意識するか」を必ずメモしてから、再び練習に戻ると効果が高まります。

音源と自分の声の最適バランス
次に、「音量」と「環境」の面から、自分の声で音源がかき消えないようにする具体策をまとめます。
ここが整うだけでも、ストレスがかなり減り、集中しやすくなります。
また、小声シャドーや口パクをいつ使うか、イヤホンや声質の選び方も、この章で整理します。
音量設定と環境づくり
まずは音量設定です。
目標は、教材音声の方が、自分の声より少し大きいか、同じくらいに感じる状態です。
具体的には、次のように調整してみてください。
可能なら、外付けスピーカーを使うと音がクリアになり、英語の細かい音も聞き取りやすくなります。
また、図書館や自習室など、元々静かな場所を選ぶのも有効です。
周囲の雑音が多い環境しか確保できない場合は、ノイズキャンセリング付きイヤホンも選択肢になります。
学習効率や集中に関する研究でも、環境ノイズが学習の妨げになることはよく指摘されています。
たとえば、文部科学省や大学の学習環境に関する資料(例:文部科学省の学習環境関連情報)などを見ても、静かな環境の重要性は一貫して強調されています。
小声シャドーイングと口パク
「音源が自分の声にかき消される」タイプの悩みには、小声シャドーと口パクがとても有効です。
特に、最初は無意識に声が大きくなりがちなので、一度「極端に小さく」して感覚をつかむのがおすすめです。
使い分けの目安は次のようになります。
小声や口パクでも、「音と意味を結びつける」という本来の目的を意識して行えば、リスニング強化の効果は十分に得られます。
通勤・通学中や、自習室など声を出しにくい場所でも使えるので、「毎日続ける」ための強い味方にもなります。
一方で、次のような限界もあります。
・口パク中心だと、発音の筋肉があまり鍛えられない
・声の強弱(抑揚)や感情表現など、スピーキングの要素は身につきにくい
そのため、週に数回は、家でしっかり声を出す時間を確保し、「今日は小声中心」「今日は発音も意識する日」といった形で、メリハリを付けるとよいでしょう。
イヤホンと声質選びの工夫
イヤホンの使い方と、教材の声質選びも、意外と大きなポイントです。
まずイヤホンですが、次のような選択肢があります。
自分に合うスタイルは人によって違います。
実際に3パターンを試してみて、一番ストレスが少ない方法を選ぶのが近道です。
もう一つの工夫が、「自分と声質が違うナレーターの教材を選ぶ」ことです。
自分の声と音源の声が似ていると、2つの音がまざって聞こえやすくなります。
たとえば、自分が男性なら女性ナレーター、自分が女性なら男性ナレーターの音声を選ぶと、聞き分けやすくなることが多いです。
同じ性別でも、声の高さやトーンが違う人の音声の方が、音源と自分の声を区別しやすくなります。
「この音源だとやりやすい」「この声の人は聞きづらい」と感じたら、その感覚を大事にして、相性の良い教材をメインに使いましょう。

レベル調整と他トレーニング比較
最後に、「そもそも今の教材とやり方が合っているのか?」という悩みに答えていきます。
シャドーイングは負荷の高いトレーニングなので、レベルを間違えると、イライラして挫折しやすくなります。
ここでは、教材レベルの目安と、リピート・ディクテーション・日本語シャドーなど、他のトレーニングとの使い分けを整理します。
教材レベルの具体的な目安
レベルが合っているかどうかは、「スクリプトを見たときの理解度」と「シャドーイングしたときの感覚」で判断します。
おすすめの目安は次の2つです。
逆に、次のような状態が数日続くなら、レベルを下げた方がよいサインです。
・スクリプトを見ても、知らない単語や表現だらけ
・何度やっても、途中で完全に置いていかれる
・3日続けても、ほとんど楽になった感覚がない
「ゆっくりの英語は物足りない気がする」「ネイティブニュースでやらないと意味がないのでは?」と感じる人もいますが、シャドーイングは「少し難しいくらい(i+1)」がちょうど良いです。
むずかしすぎる教材で「聞こえないまま」続けるよりも、少しレベルを落とし、「聞こえる体験」を積み重ねた方が、長期的には確実に伸びます。
リピートやディクテーション
「シャドーイングで自分の声で聞こえない」「スピードについていけない」と感じるときは、一度段階を下げて、リピートやディクテーションを挟むのが効果的です。
それぞれの役割を整理すると、次のようになります。
| トレーニング | 主な目的 | 負荷 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| リピーティング | 短いフレーズを聞いてから、少し間をあけてマネする | 低〜中 | スピードについていけない/まず音を確認したい |
| ディクテーション | 聞こえた音声を書き取る | 中〜高(手間がかかる) | 細かい音の聞き取りを鍛えたい/苦手箇所を特定したい |
| オーバーラッピング | スクリプトを見て、音源と同時に読む | 中 | 内容・リズムに慣れたい/シャドーへの準備運動に |
| シャドーイング | スクリプトなしで、少し遅れて追いかける | 高 | 音と意味の結びつきを強化したい |
「音源が速すぎて、同時処理が追いつかない」と感じるなら、まずはリピーティングで、短い単位ごとに「聞く→言う」の流れに慣れましょう。
さらに、「どこが聞き取れていないか分からない」場合は、ディクテーションで書き取ってみると、自分の弱点がはっきり見えます。
これらはシャドーイングの「下支え」をするトレーニングです。
うまく使い分けることで、「自分の声で聞こえない」「ごちゃごちゃしてイライラする」状態から抜け出しやすくなります。
日本語シャドーと優先度
「英語のシャドーイングが難しいから、まず日本語で練習した方がいいのでは?」という質問もよくあります。
結論から言うと、英語力(リスニングや語彙、文法)を伸ばすことが目的なら、日本語シャドーの優先度は低いです。
日本語シャドーは、主に通訳訓練の世界で、「同時に聞いて同時に話す」処理の練習として使われます。
日本語であれば意味を理解しやすいので、「同時処理そのもの」に集中できます。
一方、一般的な英語学習者にとって、シャドーイングの主な効果は次の3つです。
これらはすべて「英語音声」を使ってこそ意味があります。
日本語の音声を真似しても、日本語運用は少し上手くなりますが、英語力アップとは直接つながりません。
そのため、次のように考えるとよいでしょう。
・通訳者を目指していて、同時処理力を鍛えたい → 日本語シャドーも選択肢
・TOEICや英会話のために英語力を上げたい → 英語シャドーに集中する
今、「英語シャドーで自分の声で聞こえない」ことで悩んでいるなら、日本語シャドーで遠回りをするより、この記事で紹介した音量バランスや手順の見直しを先に行う方が、確実に近道です。

総括
ここまで、「シャドーイングで自分の声で音源が聞こえない」問題と、その対策を整理してきました。
最後に、要点をチェックリストとしてまとめます。
今日からできることは、「音量バランスを整える」「小声シャドーを試す」「片耳イヤホンや声質の違う教材を選んでみる」という3つです。
この小さな調整だけでも、「自分の声で聞こえない」という悩みはかなり軽くなります。
完璧なシャドーイングをいきなり目指す必要はありません。
自分に合うやり方を少しずつ見つけながら、「音がちゃんと聞こえる状態」で練習を続けていきましょう。
