「all the more」は学校ではあまり詳しく習わないのに、ニュースや洋書、英会話ではよく出てくる表現です。
意味をなんとなく「ますます」とだけ覚えると、微妙なニュアンスを取りこぼしてしまいます。
この記事では、「all the more」のコアイメージと文法の仕組みから、「all the more because ~」「all the more reason to ~」などの頻出構文、さらに「more / much more / nonetheless / none the less」などとの違いまで、まとめて整理します。
日本語の「なおさら/だからこそ/かえって」にあたる感覚を、例文と一緒に身につけていきましょう。
- all the moreの本当の意味とコアイメージが分かる
- 感情・評価を強める定番パターンと会話での自然な使い方が分かる
- all the more because / all the more reason 構文を使いこなせる
- more / much more / none the less など類似表現との違いが整理できる
all the moreの意味と文法
まずは「all the more」の基本的な意味と文法の仕組みをおさえます。ここを理解しておくと、あとの構文や関連表現も一気に分かりやすくなります。
基本の意味とコアイメージ
結論から言うと、all the moreは
「ある理由や状況があるからこそ、その分いっそう~だ」
という意味です。
日本語にすると、次のような訳がよく合います。
大事なのは「理由や条件」がセットになっている点です。
単なる「とても」「すごく」ではなく、
何かがあるせいで、そのぶん強まるという「因果関係+強調」を表します。
たとえば次のようなイメージです。
この「理由があるから、その分いっそう」というイメージを頭に置いておくと、後で出てくる例文の理解がぐっと楽になります。
品詞と文型パターン
「all the more」は副詞として働きます。
形容詞や副詞、あるいは文全体の「程度」を強めます。
よく出る文型は次の3つです。
実際の例で見てみましょう。
-
英語:We respected him all the more.
日本語:私たちは彼をますます尊敬した。 -
英語:His helplessness makes me want to help him all the more.
日本語:彼が無力だから、私は彼をよけいに助けてあげたくなる。 -
英語:The result was all the more surprising.
日本語:その結果はなおさら驚くべきものだった。
1つ目の例では「尊敬する」という感情の強さが増しています。
2つ目は動詞全体(助けたいと思う気持ち)が強まっています。
3つ目は「surprising(驚くべき)」という形容詞を強めています。
どの場合も、「もともとそうだが、ある事情のせいで、その度合いがさらに増す」というイメージを持つと理解しやすいです。
the比較級との関係
「all the more」を深く理解するには、「the 比較級」の仕組みを知ることが近道です。
比較級の前にくる「the」は、冠詞ではなく副詞的な theです。
意味は「その分」「それだけ」です。
たとえば、
The longer you stay, the more you learn.
「長くいればいるほど、その分多く学ぶ」
この文の the はどちらも「その分」という意味で、前後の「長くいること」「学ぶ量」の差を表しています。
「all the more」も同じ考え方です。
all(いっそう) + the(その分) + more(より多く)
⇒「その分いっそう〜だ」「それだけなおさら〜だ」
ここで大事なのは、意味の中心は the + 比較級だということです。
all は「あくまで強調」で、「とても」に近い役割です。
実際、all を抜いて the more だけになることもあります。
I like him the better for his honesty.
「彼の正直さのせいで、なおさら彼が好きだ」
(=all the better とほぼ同じ意味)
この「the=その分」「比較級=元の状態との差」という考え方は、のちほど扱う
「all the better / all the worse / none the less」などの理解にもつながります。
比較級と副詞的 the の仕組みは、大学入試や英検などでもよく問われます。
詳しくは、文部科学省が公開している英語の指導資料でも「比較構文の理解」が重要項目として挙げられています(参考:文部科学省公式サイト)。

代表的な使い方と例文
ここからは、会話や文章でよく使うパターンを具体的な例文と一緒に見ていきます。
どれも日常会話・ビジネス・試験で役立つ形ばかりです。
all the more+形容詞の型
一番よく出るのが、
be動詞+all the more+形容詞の形です。
意味は「それだけいっそう〜だ」「なおさら〜だ」です。
例文で確認してみましょう。
-
英語:The news was all the more shocking.
日本語:そのニュースはなおさら衝撃的だった。 -
英語:His success is all the more impressive.
日本語:彼の成功はそれだけいっそう印象的だ。 -
英語:This makes your effort all the more important.
日本語:このことが、あなたの努力をなおさら重要なものにする。
3つ目の例は「make + O + all the more + 形容詞」の形です。
「このこと(this)」が理由になって、「effort(努力)」の重要性が増しているイメージです。
all the more に続く代表的な形容詞を覚えておくと便利です。
ビジネスメールやレポートなど、少しかための文でもよく使われる組み合わせです。
感情や評価を強める用法
感情動詞(like, love, respect, hate など)と一緒に使うと、「なおさら好きになる/よけいに嫌いになる」といった気持ちの変化を自然に表せます。
定番のパターンは次の2つです。
例文を見てみましょう。
-
英語:I like her all the more for her lack of common sense.
日本語:彼女には常識がないけれど、だからこそなおさら彼女が好きだ。 -
英語:We respected him all the more because he admitted his mistakes.
日本語:彼が自分の失敗を認めたので、私たちは彼をなおさら尊敬した。 -
英語:The gift means all the more to me because it’s from you.
日本語:それがあなたからの贈り物だから、私にとってはいっそう大きな意味を持つ。
1つ目の例では、ふつうならマイナスに見える「常識がない」という点が、逆に魅力になって好意が増しています。
このように、ギャップや意外性があるときに all the more は特に自然に使えます。
感情動詞と組み合わせるときによく使うセットを、いくつかまとめておきます。
逆説的な「かえって〜だ」
「all the more」は、マイナスな事情があるのに、それが理由で逆に気持ちが強まるときによく使われます。
このとき日本語では「かえって」「よけいに」と訳すと自然です。
-
英語:He is all the more beloved because he is naive.
日本語:彼はうぶだから、かえっていっそう愛されている。 -
英語:If you try to stop him, he’ll stick to it all the more stubbornly.
日本語:彼を止めようとすると、彼はいっそう頑固にそれを続けるだろう。 -
英語:His victory is all the more surprising because he didn’t study much.
日本語:彼はあまり勉強していなかったので、かえってその勝利はいっそう驚きだ。
このタイプの文では、because 以下に「ふつうならマイナスに聞こえる事実」が入ることが多いです。
そのおかげで、「そんな状況なのに成功したのか」という驚きや、「そんな性格だからこそ愛らしい」という逆説的な好意が強調されます。
訳し分けの目安は次の通りです。
※機械的に「ますます」で訳すより、文脈を見て「なおさら/だからこそ/かえって」などを選ぶと、自然な日本語になります。

頻出構文と関連表現
ここでは、試験や実際の会話でとてもよく出てくる決まり文句をまとめて紹介します。
特に「all the more because ~」「all the more reason ~」はそのまま覚えておくと便利です。
all the more because構文
「all the more」の定番パターンが、
all the more + 形容詞/副詞 + because ~
です。
形は次の3つを押さえておけば十分です。
意味はいずれも「~なのでなおさら…だ」「~だからこそ、いっそう…だ」です。
-
英語:His progress is all the more remarkable because he was self-taught.
日本語:彼は独学だったので、その成長はそれだけいっそう注目に値する。 -
英語:We were all the more excited because the game was so close.
日本語:試合がとても接戦だったので、私たちはなおさら興奮した。 -
英語:Her advice is all the more valuable because of her long experience.
日本語:彼女の長年の経験のおかげで、その助言はいっそう価値がある。
ポイントは、because 以下が「その分(the)」の理由を説明していることです。
「~だから、その分いっそう remarkable / excited / valuable だ」という構造です。
because of / for を使うときは、後ろに名詞を置きます。
all the more ~ because of + 名詞
all the more ~ for + 名詞
たとえば、英字新聞や海外ニュースサイトでも、政策や出来事の重要性を強調するときに
「all the more important because of ~」のような形がよく出てきます。
ニュース英語に興味があれば、NHKの英語ニュースページなどをチェックしてみると、実際の用例に触れられます(参考:NHKオンライン)。
all the more reason構文
会話で非常によく使われる決まり文句が、
All the more reason to ~.
です。
意味は「だからこそ〜する理由になる」「それならなおさら〜すべきだ」です。
形はシンプルで、次の2つが基本です。
否定したいときは、not を to の前に置きます。
All the more reason not to ~.
会話をイメージしながら例を見てみましょう。
-
英語:“It’s raining.” – “All the more reason to leave early.”
日本語:「雨が降ってるよ」―「だからこそ早く出発すべきだね」 -
英語:“He’s busy.” – “All the more reason not to bother him.”
日本語:「彼、忙しいよ」―「だからこそ邪魔しないほうがいいね」 -
英語:All the more reason for caution.
日本語:だからこそ、いっそう注意が必要だ。 -
英語:All the more reason to be careful.
日本語:だからこそ気をつけるべきだ。
この表現は、「相手の言ったことを受けて」「だからなおさら〜しよう」と話をまとめるときに、とても便利です。
※否定形では「All the more reason not to ~」と、not を to の前に置くのが正しい語順です。
× All the more reason to not go.(日常会話では耳にしますが、学習段階では避けた方が安全です)
all the betterなど関連形
「all the more」の仲間として、次のような表現があります。
どれも同じ「the 比較級=その分〜」の考え方で理解できます。
| 表現 | 意味 | 例文(日本語) |
|---|---|---|
| all the better | その分いっそう良い | ~なら、なお結構だ |
| all the worse | その分いっそう悪い | ~なので、かえって悪い |
| all the easier / harder | その分いっそう簡単 / 難しい | ~だから、いっそう簡単 / 難しい |
| none the less | それでもなお同じくらい | それでもやはり~だ |
代表的な例文も見ておきましょう。
-
英語:I like him all the better for his honesty.
日本語:彼の正直さのせいで、私は彼がなおさら好きだ。 -
英語:The movie was all the worse for its long running time.
日本語:上映時間が長すぎて、その映画はかえってつまらなかった。 -
英語:The task will be all the easier with your help.
日本語:あなたが手伝ってくれれば、その作業はいっそう簡単になる。
構造は「all the + 形容詞の比較級」です。
more だけでなく、better / worse / easier / harder などの比較級にも同じように使えます。
「all the better」は、「そうならなお結構」「それならかえって都合がいい」という軽い会話表現としてもよく使われます。

類似表現との違いと注意点
最後に、「all the more」と間違えやすい表現との違いを整理します。
似ているようでニュアンスが違うので、ここでまとめて区別しておきましょう。
more類との違い
「all the more」は「more」系の仲間ですが、役割が少し違います。
ざっくり言うと、
例文で違いを見てみましょう。
-
英語:I need more time.
日本語:もっと時間が必要だ。(単純に量を増やしてほしい) -
英語:I need much more time.
日本語:もっとたくさん時間が必要だ。(かなり多く) -
英語:I like English more and more.
日本語:私は英語がだんだん好きになってきている。 -
英語:I like English all the more because I can talk with foreign friends.
日本語:外国の友達と話せるので、私は英語がなおさら好きだ。
3つ目の「more and more」は、時間の経過による変化を表します。
4つ目の「all the more」は、時間は関係なく「外国の友達と話せるから」という理由による強まりです。
※日本語ではどちらも「ますます」と訳せますが、
・more and more:時間がたつにつれて
・all the more:何かの理由があるから
という違いがあることを意識しておきましょう。
none the lessとの違い
「none the less」は形が似ているので、「all the more」と一緒に覚えておくと便利です。
構造は、
none(全く~ない) + the(その分) + less(より少ない)
⇒「少なくなる分は全くない」=「それでもやはり~だ」
つまり、「ある事情があっても、その分だけ少なくなってはいない」という意味で、
日本語ではそれでもなお/それでもやはりに近くなります。
例文を見てみましょう。
-
英語:It is none the less true because it sounds strange.
日本語:それは奇妙に聞こえるかもしれないが、それでもなお真実だ。 -
英語:I like him none the less for his faults.
日本語:彼には欠点があるが、彼を好きな気持ちは少しも減らない。
「none the less」は、単独で副詞としても使われ、「それでもなお」「それにもかかわらず」という意味になります。
一方、「nonetheless / nevertheless」は接続詞的に使われる副詞で、「それにもかかわらず」という意味ですが、
the 比較級の形を含まないので、「その分」というニュアンスは表に出てきません。
整理すると次のようになります。
よくある誤用とQ&A
最後に、学習者が特につまずきやすいポイントを、Q&A形式で整理します。

総括
ここまで「all the more」の意味と使い方を、コアイメージから関連表現まで一気に見てきました。
最後に、重要ポイントをまとめます。
- all the moreは「ある理由・事情があるからこそ、その分いっそう〜だ」という意味
- 品詞は副詞で、「be all the more + 形容詞」「動詞 + O + all the more」「make O all the more + 形容詞」などの形をとる
- the 比較級の the は「その分」という副詞で、all は単なる強調(なくても構文は成立する)
- 「all the more + 形容詞 + because / because of / for ~」で「~なのでなおさら〜だ」を表す頻出構文になる
- 「All the more reason to ~ / not to ~」は「だからこそ〜すべきだ/すべきではない」という決まり文句で、not の位置に注意する
- 感情や評価を強めるときは「like / love / respect / hate + O + all the more (for ~)」「mean all the more to 人」の形がよく使われる
- 逆説的な文脈では「かえって/よけいに」と訳すと自然で、「常識がないからこそ好き」「勉強してないからこそ驚く」などのギャップを表せる
- more / much more は単なる量の増加、more and more は時間的な増加、all the more は「理由による強まり」と覚えて使い分ける
- none the less / none the 比較級 は「それでもなお〜だ」という意味で、all the 比較級の否定版として一緒に覚えると理解しやすい
- 日本語の「ますます」を見たとき、「時間の変化」なら more and more、「理由があるからこそ」なら all the more を選ぶ、という基準を持つと誤用を防げる
実際に身につけるには、自分の文で何度も使ってみることが一番です。
たとえば次の日本語を、英語にしてみましょう。
すぐに完璧に言えなくても、「ここは all the more が使えそうだな」と意識できれば大きな一歩です。
少しずつ、「なおさら/だからこそ/かえって」を英語で言える感覚を育てていきましょう。

