「シャドーイングを毎日やっているけど、正直あまり伸びている気がしない」「ネットで『意味ない』『逆効果』という意見も見て不安になった」。
こう感じている人は多いです。
この記事では、シャドーイング推しでも、全否定でもありません。
どんな人には意味が薄いのか、どんな人には効果があるのかをはっきり分けて、あなたが「続けるべきか・やめるべきか」を自分で判断できるように整理します。
あわせて、初級〜中級レベルで本当に優先すべき学習法と、もしシャドーイングをやるなら「いつ・どのように」取り入れるべきかも、具体的な手順まで解説します。
- 「シャドーイングは意味ない」と言われる理由と、意味が出る条件が分かる
- 自分のレベルでシャドーイングを続けるべきか・やめるべきか判断できる
- 初中級者が優先すべきリスニング・スピーキング勉強法と手順が分かる
- シャドーイングを取り入れる適切なタイミング・頻度・やり方が分かる
シャドーイングは意味ないのか
まずは多くの人が一番気になる、「そもそもシャドーイングは意味がないのか」という問いから整理します。
ここでは、シャドーイングが向いている人・向いていない人の条件、「意味ない」と言われる理由、そして今すぐやめるべきかの判断軸をまとめます。
結論と向いている人の条件
結論から言うと、シャドーイングは「ほとんどの学習者にはコスパが悪いが、一部の上級者には有効」な学習法です。
いろいろな専門家の意見を総合すると、シャドーイングが本当に力になるのは、次のような人です。
逆に言うと、TOEIC600点前後までの初中級者にとっては、時間対効果がかなり悪いトレーニングになりやすいです。
もちろん、初中級でもシャドーイングをまったくやってはいけない、という意味ではありません。
ただし「メインの学習法」にするのではなく、「短時間のおまけ練習」にとどめるくらいが現実的です。
意味ないと言われる主な理由
シャドーイングが「意味ない」「逆効果」とまで言われる理由は、大きく4つあります。
1つ目として、シャドーイングは「聞きながらほぼ同時に話す」訓練です。
つまり、聞き取り・意味理解・口を動かす作業を同時にやる必要があります。
この同時処理は、もともと同時通訳者のための特殊な訓練として作られたものです。
そのため、初中級者がやると「とにかく音についていくだけ」で精一杯になってしまい、
・どんな音が聞こえているか
・それがどんな意味か
・自分の口から出ている音が正しいか
といった、本来鍛えたいポイントを考える余裕がなくなります。
さらに、お手本音声と自分の声が重なるので、自分の発音のズレに気づきにくくなります。
この状態で何百回も繰り返すと、「なんとなくそれっぽいが、伝わりにくい発音」が固定されてしまうリスクがあります。
続けるべきかやめるべきか
では、今すでにシャドーイングをしている人は、続けるべきでしょうか、それとも一度やめるべきでしょうか。
判断の目安として、次の3つの質問を自分に投げかけてみてください。
1つ目と2つ目が「いいえ」の人は、いったんシャドーイングをメインから外し、
・発音の基礎
・音読、リピーティング
・精聴、ディクテーション
といった「音と意味をしっかり結ぶトレーニング」に時間を回した方が、結果として上達が速くなります。
3つ目が「いいえ」の人は、まず録音して自分の発音を確認してみてください。
そこでお手本とかなり違うと感じるなら、やはりシャドーイングの前に音読と発音練習を優先した方が安全です。

シャドーイングの本来の目的
ここからは、「そもそもシャドーイングとは何か」「本来は何のために行う訓練なのか」を整理します。
本来の目的が分かると、「自分の目的と合っているか」「今のレベルでやるべきか」が見えやすくなります。
本来の定義と訓練目的
シャドーイングは、もともと同時通訳者の訓練として作られた方法です。
定義を一言でいうと、「流れてくる英語音声を、ほぼ同時に少し遅れて真似して発話するトレーニング」です。
リピーティング(音声を一文聞き終わってから繰り返す)と違い、「聞く」と「話す」を同時に行います。
同時通訳では、
・相手の英語を聞きながら内容を理解し
・同時に日本語で話し続ける
という高度な作業をこなします。
そのために必要な「聞きながら話す」神経回路を鍛えるのが、本来のシャドーイングの目的です。
つまり、「一般の英語学習者のリスニング・スピーキング力アップ」のために作られた方法ではなく、かなり特殊な職業訓練だったわけです。
この背景は、通訳養成学校の説明などでも触れられています。
たとえば、上智大学の通訳案内などの資料でも、同時通訳訓練の一手法としてシャドーイングに触れている例があります(参考:上智大学の通訳教育関連の取り組み)。
鍛えられる力と限界
では、シャドーイングでどんな力が鍛えられ、どこに限界があるのでしょうか。
一般に言われるメリットは次の通りです。
一方で、限界や弱点もはっきりしています。
・意味があいまいなまま音だけ追ってしまうことが多い
・お手本と自分の声がかぶるので、自分の発音を客観視しにくい
・細かい音の聞き分けや、文法理解の強化とは相性がよくない
リスニング・スピーキングの本質は、「音と意味の双方向の変換」です。
ですが、シャドーイングの大きな比重は「音を短期記憶して再生する作業」にかかっています。
この「音→記憶→音」という処理は、実際の会話ではほぼ必要ありません。
そのため、シャドーイング支持派の中でも、「あくまで仕上げのトレーニングであり、基礎作りには向かない」とする意見が多くなっています。
レベル目安と必要な前提力
では、どのくらいのレベルからシャドーイングに意味が出てくるのでしょうか。
いくつかの専門家の見解や、コーチングスクールの説明をまとめると、おおよその目安は次のようになります。
このレベルに達していないと、「音についていくだけで精一杯」になってしまい、「音と意味のリンク」「発音の改善」といった本来のねらいに届きにくくなります。
また、文部科学省が公開している英語教育の資料でも、中高生向けの音声活動としてはシャドーイングよりも音読やリピーティングが中心になっており、シャドーイングはあくまで発展的な活動として位置づけられています(参考:文部科学省・外国語活動関連資料)。
このことからも、「基礎ができてから使う発展トレーニング」という位置づけが妥当だと考えられます。

初中級者が優先すべき学習法
ここからは、「シャドーイングの前に何をすべきか」を具体的に見ていきます。
特にTOEIC600点前後までの人は、この章の内容がそのまま学習ロードマップになります。
音と意味を結ぶ学習プロセス
英語のリスニングとスピーキングの本質は、とてもシンプルです。
・リスニング:音 → 意味
・スピーキング:意味 → 音
この「音と意味のリンク」が強くなるほど、聞き取りも話す力も上がります。
そのため、初中級者がまずやるべきなのは、
1. 英語の音を正しく聞き分けられるようになる
2. 聞こえた音を、すぐに意味と結びつけられるようにする
という、シンプルな二段階です。
具体的には、次のような順番がおすすめです。
この流れに沿ってトレーニングしていくと、「音」と「意味」が自然と結びついていきます。
この土台ができてから初めて、シャドーイングのような高負荷トレーニングにも意味が出てきます。
音読やリピーティングとの違い
よく混同されるのが、シャドーイングと音読・リピーティングの違いです。
それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。
| トレーニング | やり方 | 主に鍛えられる力 | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 音読 | スクリプトを見ながら、自分のペースで読む | 発音の正確さ、リズム、意味と音のリンク | 低〜中 |
| リピーティング | 1文ずつ聞いてから、同じように繰り返す | 聞き取り、発音、音声の記憶 | 中 |
| シャドーイング | 聞きながら、ほぼ同時に少し遅れて発話する | スピードへの耐性、同時処理、リズム | 高 |
音読は、「意味を考えながら、口や舌の動きを丁寧に作り込める」のが強みです。
スピードの制約がないので、「正確さ」を意識しやすくなります。
リピーティングは、「聞く → 少し覚える → まとめて言う」という流れなので、シャドーイングよりも余裕を持って取り組めます。
どちらも、「音と意味のリンク」をじっくり作るのに向いた練習です。
一方、シャドーイングは最初からスピードに縛られます。
そのため、初中級者の場合、「とにかく追いかける」だけの作業になりやすく、
・どこが聞き取れていないのか
・どの音が自分には出せていないのか
を点検しにくい、という弱点があります。
推奨トレーニング手順
ここでは、シャドーイングの代わりに、初中級者が優先すべきトレーニングの手順例を示します。
「英語ニュース1本」「短めの会話教材」など、2〜3分の音声を使う想定です。
録音できる環境があるなら、③の音読と④のリピーティングは録音して、お手本と聞き比べてください。
自分の発音のクセに気づくだけでも、リスニングはかなり変わります。
ここまでのプロセスをこなした教材なら、最後に「おまけ程度に」シャドーイングを1〜2回やってもよいでしょう。
この順番だと、シャドーイングは「すでに意味も音も分かっている教材で、スピードになれるための仕上げ練習」として機能します。

シャドーイングの適切な使い方
最後に、「それでもシャドーイングをやってみたい」「上級レベルで使いこなしたい」という人に向けて、適切な使い方をまとめます。
始めてよいサイン、効果が出るやり方と頻度、他の学習法との時間配分を、実践しやすい形で整理します。
始めてよいサインと条件
次のようなサインが見えたら、シャドーイングを少しずつ試してよい段階と考えられます。
また、メンタル面でも、「とりあえず流行っているから」ではなく、
・スピードへの耐性を上げたい
・通訳系の仕事を目指している
・すでに基礎は固まっていて、さらに負荷を上げたい
といった、具体的な目的があることが望ましいです。
効果が出るやり方と頻度
シャドーイングで効果を出すためのポイントは、「いきなりシャドーイングから入らないこと」です。
1つの教材に対して、次の順番で進めると、意味と音を保ったまま負荷を上げられます。
頻度の目安としては、
・1回あたり5〜10分程度
・週3〜5日
・同じ教材を数日〜1週間かけて仕上げる
くらいで十分です。
時間をかけすぎると、「完璧にシャドーイングすること」が目的化しやすいので注意しましょう。
あくまで、「すでに理解した教材を、自然なスピードで処理する練習」として使うのがコツです。
時間配分と他学習法との組み方
最後に、限られた学習時間の中で、シャドーイングにどれくらい時間を割くべきかを整理します。
週に7〜10時間ほど学習時間が取れる社会人を想定して、目安の配分例を示します。
TOEIC600点前後までの人は、シャドーイングを入れず、上の「シャドーイング:週1〜2時間」を丸ごと音読・精聴に回してかまいません。
TOEIC800点以上や、英検準1級以上が見えてきた人は、シャドーイングに週1時間ほど振り分けてみるとよいでしょう。
大事なのは、シャドーイングを「学習時間の中心」にしないことです。
あくまで、「すでに身につけた音と意味の回路を、スピードに慣らすためのサブメニュー」として位置づけると、失敗しにくくなります。

総括
ここまで、シャドーイングが「意味ない」と言われる理由と、正しい使い方について見てきました。
最後に、要点を箇条書きでまとめます。
「シャドーイングをしないとダメ」でも「完全に意味ない」でもありません。
自分のレベルと目的をよく見て、いったん距離を置くのか、上級の仕上げとして少しだけ取り入れるのかを選ぶことが大切です。
今日からの学習メニューを見直すときの、1つの判断材料として活用してください。

